2019 Fiscal Year Research-status Report
Study on feasibility of the kinetic equation with thermal bath
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17K18840
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高田 滋 京都大学, 工学研究科, 教授 (60271011)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2021-03-31
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Keywords | 気体分子運動論 / 実在気体効果 / Cercignani-Lampis条件 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の実施状況は以下の通り. 1.カーン・ヒリアード型の方程式を流体極限としてもつ簡便な運動論方程式は意図的に行った「過度の」簡単化を含んでいる.本年度は前年度に引き続き,この「過度の」簡単化の手続きの緩和を図るべく,より現実的な簡易モデルの構成のあり方を検討した.さらに境界に起因する難点が生まれない周期系を対象にして,実際に数値シミュレーションを行った. 2.上述の簡易モデルにおいて平均場近似に取り入れた局所場近似の仮定を緩め,分子間力を具体的に与えた数値シミュレーションを行った.その結果,平均場近似における分子間力ポテンシャルのパラメータとファン・デル・ワールス状態方程式のパラメータとの間で適切な関係を保たなければ,局所場近似に基づくシミュレーション結果が正しく再現できないことが明らかになった. 3. すでに前年度にCercignani-Lampisの境界条件モデルの背後にある力学的描像を抜き出す Langevin 描像を同定したが,この結果を国際会議で発表した. 4.エンスコグ理論によれば,高密度気体のプラントル数は2/3を20%弱下回りうる.このことを念頭において,Ellipsoidal Statistical モデルと呼ばれる拡張型緩和衝突模型の低プラントル数領域でのエントロピー的な性質を調べた.その結果,この領域で良好なエントロピー性を維持するためには,応力の非等方性に一定の制約が必要であることを定量的に示した.さらに,この制約から生まれる実際上の適用限界を,複数の厳しいテスト問題により具体的に調べた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「過度」の簡易化を行ったモデルの本質的な一般化にはまだ十分に成功しているとはいいがたいが,局所場近似の有効性の吟味など,これまで置き去りにしてきた検証を進め,萌芽的研究の基盤づくりが大いに進んでいる.その一方で,相分離シミュレーションの結果の分析において,これまで注目してこなかったスピノーダル分離とバイノーダル分離の区別が明瞭になり,とくに後者の臨界線の予測にめどが立ってきた.そのため事業期間を年間延長することを申請し,許可されている.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は事業期間を1年間延長することを申請し,許可されている.研究の当初計画では注目してこなかったスピノーダル分離とバイノーダル分離の区別,さらに後者の臨界線の予測方法の確立を延長期間内に進めたい.これにより,本研究課題を萌芽段階から本格的な研究対象に発展させる目途を立てる所存である.
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Causes of Carryover |
すでに述べた理由から,研究期間を1年間延長することにしたため.延長申請の時点では,2020年度に開催予定の国際会議にかかる旅費(2019年度開催予定が2020年度に延期されたものを含む),共同研究のための国外研究者の招へい費用に主に充てる予定であった. 本報告書執筆の時点では,COVID-19の全世界的な影響で,当初の旅費支出予定の対象だった国際会議はすべて2021年度に延期されることになった.そこで,成果発表の内容をさらに充実させるために,大規模シミュレーションの実施に欠かせない現有計算機の大幅なメモリ増強に,経費の多くを充てるつもりである.
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