2017 Fiscal Year Research-status Report
自己修復可能な絶縁層を有するプラズマアクチュエータ
Project/Area Number |
17K18846
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
瀬川 武彦 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (50357315)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
廣瀬 伸吾 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, エレクトロニクス・製造領 (10357874)
松沼 孝幸 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (40358031)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 誘電体バリア放電 / アクチュエータ / 流体技術 / 自己修復材料 / 絶縁層 / 省エネルギー / 流れの可視化 / 高機能材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究で試作するプラズマアクチュエータは、従来型と同様に絶縁層となる誘電体の表裏両面に電極となる2枚の金属板を設置しただけの極めてシンプルな構造であり、電極の非対称配置によって壁面に沿う一方向のジェットを誘起することで流動特性を把握する。研究開始直後から、誘電体層に人工的なボイド構造を造形するための手法開発に取り組んだ。網目状の金属やプラスチックを型として、低融点樹脂を塗りこむことにより、ポーラス状の薄膜誘電体の形成を試みた。それらを多層化することで厚みが0.5mm程度の絶縁中間層を試作する手法を試みたが、型から薄膜誘電体を破損することなく剥離させることが困難であった。また、形成後の時間経過により反りや亀裂が生じることが多く、供試体ごとの個体差を小さくする必要があった。 そこで、空隙率の異なるポーラス状アルミナセミックス板を絶縁中間層とする新しい構造を採用した。ポーラス状のアルミナセラミックス板の上下面には、膜厚0.5㎜のシリコーンゴムシートを接着することで、上下面が絶縁層に挟まれた一体型のポーラス状アルミナセラミックスを構築することが可能となった。交流高電圧を印加するめの表裏電極には、銅テープを利用した。一方、アルミナセラミックスの空隙はボイド構造として機能し、表裏電極間への電圧印加により誘電体バリア放電が生成されることが確認された。そこで、自己修復機能を付与するための予備実験として、ポーラス状アルミナセラミックスの一部に低融点樹脂を充填させた供試体の試作に取り組み、総厚み1.5㎜程度のプラズマアクチュエータの試作に成功した。供試体に内部構造の変化が供試体の静電容量の変化に与える影響を調査するため、正弦波電圧を連続印加時の消費電力の時間変化をV-Qリサージュ法で解析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
低融点樹脂やポーラス構造を持つアルミナセラミックス板を絶縁中間層として構成されるプラズマアクチュエータの試作に予想以上の時間を要した。また、プラズマクチュエータ供試体を試験セル内で連続駆動した場合、テストセル内のオゾン濃度が急速に上昇するため、活性炭フィルターを備えた送風機を設置し、テストセル内のオゾン濃度がある程度一定になるよう対策を講じた。しかし、送風機をセル内に設置したことにより循環空気が徐々に加熱され、プラズマアクチュエータ誘起ジェットの駆動条件が大きく変化することが明らかになった。そこで、オゾン濃度の上昇を抑制しながら、テストセル内の空気温度をある程度一定にするための機構の設計や確認のための予備試験に多くの時間を費やしたため、進捗がやや遅れた。
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Strategy for Future Research Activity |
自己修復機能を持たせるための新たな試みとして、内部構造や空隙率の異なる絶縁中間層を3次元プリンタによって造形し、薄膜化による多層化や内部構造の高度化を行う。また、低融点樹脂と3次元構造体を恒温炉内に設置されている金属容器内に同封し、加熱条件を変化させることで絶縁中間層の空隙に低融点樹脂を充填する手法を開発する。平成29年度の実験では表裏電極として銅テープを用いたが、銅テープと絶縁層との接着性が低く、想定しない場所で誘電体バリア放電が生じることが確認された。そこで、シリコーン両面銅張積層板のエッチングによる電極と上下絶縁層の一体形成や、イオンプレーティングなどの高度なコーティング技術を用い、可能な限り凹凸が無く上下絶縁層との接着性に優れた電極形成を行う。 性能評価試験を実施するために、テストセル内のオゾン濃度、プラズマアクチュエータ近傍の空気温度を一定にする機構を備えたテストセルを試作し、異なる絶縁中間層を有するプラズマアクチュエータ供試体について、電圧印加後のボイド構造の変化が誘起されるジェットの流動特性や電気特性に与える影響を調査する。ジェットの流動特性は粒子画像流速測定法(PIV)を用いて解析し、電気的特性は瞬時の電力を解析するとともに、絶縁中間層の状態を電圧印加後に時間的に変化する電力特性から明らかにする。またV-Qリーサジュ図形を詳細に解析し、絶縁中間層のボイド構造の違いが絶縁層全体の静電容量の変化に与える影響を定量的に評価する。これらの実験結果をもとに、自己修復可能なプラズマアクチュエータの等価回路のモデル化を行う。
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Causes of Carryover |
「現在までの進捗状況」報告したように、テストセル内のオゾン濃度の上昇を抑制しながら、空気温度をある程度一定にするための機構開発が必要となった。よって次年度使用額を活用して、(1)テストセル外部への排出する高濃度オゾンを含む空気を活性炭フィルターを介して清浄するための機構、(2)テストセル外部からの空気流入機構、(3)流入空気をセル内で整流する機構、の3つの機構を備えたオゾン排気システムの試作に活用する。また、供試体試作のノウハウが蓄積されたため、様々な供試体の試作補助を行うテクニカルスタッフの雇用に予算配分を行う。
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