2017 Fiscal Year Research-status Report
ヤブガラシの把持パターン分岐メカニズムの解明と機械工学への応用
Project/Area Number |
17K18851
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
斉藤 一哉 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 特任講師 (40628723)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新山 龍馬 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 講師 (00734592)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | ヤブガラシ / 生物模倣工学 / スマート構造 / ロボティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
つる植物の1種であるヤブガラシは,”脳”も”目”も持っていないのに,自分が巻きつく対象に合わせて最適な形に巻きひげを変形させて把持している.工学的観点からこのシステムの最大の謎は,「ヤブガラシ自身は掴むものの全体形状を知らないはずなのに,何故対象に最適な把持パターンを選択できるのか」と言う点に集約される.複雑な情報処理システム(脳)を持たないヤブガラシは,単純な知覚(接触判定)と応答(曲率の生成)の繰り返しだけで,最適な把持パターンを自己組織化的に選択しているはずである.本研究課題は,工学者と植物学者が連携して上記の謎の解明に挑み,巻きひげの高度な自律最適把持メカニズムを明らかにすることで,ロボティクスや医療デバイス等に応用可能な新しいスマート構造デバイスの創製を目指すものである. 初年度にあたる平成29年度は,効率的な栽培,観察方法を含め,実験系の構築と関連研究の調査を中心に行った.低速度撮影のためのカメラの選定や治具の製作を行い,3次元計測用ソフトウェアをつかった動きのデータ化手法の構築を行った.また,動きの高精度なトラッキングのためのツルへのマーキングについて検討し,蛍光反射塗料の選定を行った.さらに,得られた成果をロボティクスに応用するため,ソフトロボットやアクチュエータに関する関連研究の調査を行った.円柱への把持パターン分岐に関する実験を行い,径の違いで3種に分岐する具体的なメカニズムに関して研究を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,観察・モデル提案・モデル製作の3つフェーズで進行する.初年度にあたる平成29年度は申請時の計画通り,観察フェーズを中心に研究に取り組んだ.低速度撮影,解剖学的観察,立体計測による運動解析の3つの手法に関して,基礎的なアプローチを構築できたことから,おおむね順調に進展していると判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
観察フェーズの結果を基に,平成30年度,31年度は申請時の計画通り,モデル提案・モデル製作のフェーズ弐進行する.平成30年度はこれまでに構築した実験手法を基に,把持動作の力学モデルの提案と巻きひげ変形機構のモデル化に取り組む.運動解析技術を応用し変形過程の巻きひげの局所的な変位分布を解析する.得られた知見を基に把持動作の力学的原理を解明すると共に,数値シミュレーションで実証を行う.これまでに円柱への把持パターン分岐が直径の違いによって起こることが示されており,この知見を足がかりに角柱などその他の形状で分岐が起こるメカニズムを解明する.これらの結果を基に,巻きひげの変形機構を説明する新しいモデルを提案する.細胞の膨張収縮や植物の成長などの変形現象をシンプルに表現する小ユニットを考え、それらを円柱状に積層した巻きひげモデルを考える.最終年度には研究成果の論文化を勧めると共に,ロボットへの実装を目指す.
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Causes of Carryover |
本課題の研究代表者である斉藤一哉は平成29年6月に東京大学内で所属が変わり,生産技術研究所から大学員情報理工学系研究科特任講師へ着任した.当研究室が移動したことで知能機械専攻の保有するスタジオ設備等の利用が可能となったため,撮影機材の購入用に計上していた費用を次年度の研究計画で利用することとした.具体的には試作ロボット製作費を拡充させ,より完成度を高めた機能実証モデルの作成に当てる.
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