2018 Fiscal Year Research-status Report
ミクロンの表面凹凸の違いを指先で感じ取る「匠の技」の脳科学的解明
Project/Area Number |
17K18855
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
楊 家家 岡山大学, ヘルスシステム統合科学研究科, 助教 (30601588)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
呉 景龍 岡山大学, ヘルスシステム統合科学研究科, 教授 (30294648)
山本 洋紀 京都大学, 人間・環境学研究科, 助教 (10332727)
高橋 智 岡山大学, ヘルスシステム統合科学研究科, 准教授 (20236277)
呉 瓊 岡山大学, ヘルスシステム統合科学研究科, 助教 (40762935)
于 英花 岡山大学, ヘルスシステム統合科学研究科, 特別研究員(RPD) (60812039)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 指紋微小振動 / 触覚認知機能 / 体性感覚野 / 脳機能 / 匠の技 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトは,わずか数ミクロンの凹凸でも指先で触れるだけで凹凸判断ができる能力を備えている。多くの自動車メーカーの工場では,熟練の技術者が経験で磨いた「匠の技」を利用して,車体表面を撫でることで数ミクロンの突起を検出し,品質検査を行っている。しかし,車体表面は塗料でコーティングされているため,この「匠の技」を既存の光学系計測システムに置き換えることができないのが現状である。一方,このような熟練の技術者は,「どのようにしてミクロンオーダーの凹凸を指先で検知しているのか?」,「脳内でどのような情報処理して接触面の違いを判断できるのか?」の疑問の未解明が,「匠の技」を工学的技術に置き換えることができない主な要因である。本研究は,上記の疑問に対する解答を得て,「匠の技」を工学的技術に置き換える方策を提案することを目的である。 今年度は,前年度で試作した2次元レーザ測定ユニットを用いた指紋微振動直接観察システムの原案を見直し,新たにシステムの研究開発に取り込んできた。具体的に,前年度で試作した2次元レーザ測定ユニットを用いた場合は,静止の指紋三次元構成の計測ができるが,微小振動の検出時にノイズが多かったため,測定不能の問題点があった。今年度は,まず高速度カメラによる計測方式へ変更し,システム全体構成を改良した。次に,触覚凹凸縞模様パターンの凹凸幅を変化させて(0.1mm, 0.2mm, 0.5mm, 0.7mmと1.0mmの5種類),システムの評価実験を行った。その結果,新システムの撮像ノイズ低減が顕著であり,5種類の刺激中0.5mm以上の3種類において,刺激時の指紋微小振動の計測に成功した。さらに,課題である凹凸幅0.1mmと0.2mmの縞模様を用いた場合の指紋微小振動の計測は,解決策案も出来ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度において,新たな計測手法を取り入れ,指紋微振動直接観察システムの開発に取り込んできた。本研究を企画した当初に,2次元レーザ測定ユニットを用いて,指紋微振動直接観察システムを構築すると考えた。しかし,レーザ光がカバーできる撮像範囲が狭く,指紋の振動によって発生したノイズが大きく,振動そのものの検出正確性に大きく影響が与えている。そのため,代表者らは,高速度カメラを用いる新しいシステムを考案し,製作に取り込んだ。その結果,新システムは,触覚凹凸縞模様パターンの凹凸幅0.2mm以下の場合においてさらなる改善が必要であるが,おおよそ予定している成果が得られたため,本研究課題は概ね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は,本研究計画の最終年度であり,以下の3項目を実施する予定である。1. 指紋微振動直接観察システムの改良。システムの改良において,主に前述通りの凹凸幅0.2mm以下の場合指紋微振動の観察と,撮像・ノイズ除去・指紋特定・振動周波数分析等の一連作業の自動化プログラムの作成である。2. 凹凸刺激に対する指紋微小振動と表面手触り感の相互関係の解明。前述のように,表面のミクロン単位の空間構成情報は撫でる動作によって時間的変化が現れて検知するが,これを確たる証拠を示すには,指紋振動を観察するだけでなく,その心理的評価との関係を明らかにする必要がある。改良したシステムを用いて,指が対象表面を撫でる時のつるつる感・粗さ感と指紋微小振動の関係を実験的に解析する。3. ミクロンの表面凹凸の違いを指先で感じ取る脳機能の検討。fMRI実験を実施することにより,指が対象表面を撫でる時脳活動を観察し,つるつる感・粗さ感に関与する脳活動部位のネットワークを検討する。
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Causes of Carryover |
購入部品の見積時の金額と実際の購入時の金額に差額が生じたため,39円が残り,次年度へ繰り越して活用する予定である。
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Research Products
(4 results)