2017 Fiscal Year Research-status Report
シリサイド半導体への酸素添加によるSiタンデム太陽電池用トップセルの開拓
Project/Area Number |
17K18865
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
末益 崇 筑波大学, 数理物質系, 教授 (40282339)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 太陽電池 / シリサイド半導体 / 禁制帯幅 / ドーピング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、禁制帯幅が1.3eVでSi基板上に高品質成長可能なBaSi2を用い、格子間位置(4cサイト)にSi原子数の約10%に相当する酸素原子を侵入させたBaSi2:O膜をSi(111)面にエピタキシャル成長し、光吸収端を評価することで1.6eV以上の禁制帯幅を実現することを目的とする。BaSi2膜中に酸素を導入する薄膜堆積方法として、これまで注力してきた分子線エピタキシー法に変えてスパッタ法を選び、平成30年度は、スパッタ法によるBaSi2膜の形成と、酸素がBaSi2の格子間位置に存在するか否かをどのように検証するか、これら2つに絞って研究した。 分子線エピタキシー法に比べて、スパッタ法は大面積での成膜が可能であり、太陽電池を目指す上でより好ましい成膜方法といえる。これまで、BaSi2膜のスパッタ法での形成については、過去に、BaSi2ターゲットを室温でスパッタし、その後、真空チャンバー内で600度でアニールすることで、BaSi2膜を形成してきた。しかし、電子密度が1cc当たり10の19乗以上と大変大きく、そのため、分光感度は極めて小さかった。平成29年度は、基板を600度に加熱できるよう成膜装置を整え、また、堆積膜のBaとSiの組成比を精密にコントロールすることで、BaSi2膜の形成に成功した。堆積したBaSi2膜の分光感度は、従来よりも400倍程度大きく、さらに、電子密度が1cc当たり、10の16乗台と3桁も低減し、高品位のBaSi2膜形成に成功した。 次に、BaSi2中にドープした酸素の位置をどのように調べるか、第一原理計算で様々な位置を想定して、格子振動について調べた。その結果、酸素がBaSi2の4cサイトに入った場合、Ramanスペクトルで、593cm-1付近に、ピークが出現することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで、BaSi2膜を分子線エピタキシー法で成膜してきたが、その場合、酸素をどのように制御してBaSi2膜中に添加するか、適切な方策が思い浮かばなかった。一方、スパッタ法では、BaSi2ターゲットをスパッタと同時に、SiO2ターゲットをスパッタすることで、酸素原子をBaSi2膜中に取り込めると着想し、BaSi2膜のスパッタ成膜に注力した。従来よりも、極めて高品位のBaSi2膜が形成でき、禁制帯幅拡大の検証に必要な明瞭な分光感度特性も得られてた。また、BaSi2中に酸素が入ったときの検証も、Ramanスペクトルから可能であることが分かった。これらを踏まえ、研究は順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、BaSi2膜を形成する際に、BaSi2ターゲットのスパッタに加え、SiO2ターゲットをスパッタできるよう、小型のスパッタガンを1台導入し、酸素を添加したBaSi2膜を形成する。そして、酸素量により分光感度スペクトルの立ち上がり波長がどのように変化するか調べ、禁制帯幅拡大を実証する。また、酸素が格子間位置に入っているか否かは、Ramanスペクトルのピーク位置で確認する。
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Causes of Carryover |
第一原理計算では、酸素原子をBaSi2の格子間サイト(4cサイト)に導入することで、禁制帯幅拡大が期待されるが、そのようなBaSi2膜の形成方法として分子線エピタキシー法を当初考えていた。しかし、この方法では、酸素をクラッキングして原子状にして供給する際に、酸素の量を精密に制御することが難しかった。このため、スパッタ法でのBaSi2膜形成に移った。「研究実績の概要」にも書いたように、スパッタ法での高品位BaSi2膜の形成に成功し、もう1つ別のスパッタガンにて、SiO2ターゲットをスパッタすることで、酸素量を制御したBaSi2膜の形成が可能と着想した。酸素以外にも、炭素原子の添加により、BaSi2の禁制帯幅拡大が予想されるが、この場合には、SiCターゲットをスパッタすることで対応可能と判断した。このように、H30年度にスパッタガンを導入する計画のため、H30年度使用額が生じた。
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