2017 Fiscal Year Research-status Report
Creation of spin semiconductor solar energy conversion device
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17K18870
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田畑 仁 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (00263319)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | エネルギー変換 / 太陽光 / スピン秩序 / 極性制御 / 光水分解 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、地球上(地表付近)での資源的豊富指標であるクラーク数が1番の酸素と4番の鉄の化合物(鉄酸化物系)を活用して、人・環境に調和した新規太陽光エネルギー変換システムを実現することである。汎用型太陽電池であるp-n接合系に留まらず、光合成原理に倣った人工光合成系への拡張を実現するため、鉄酸化物の中でバンドギャップが太陽光の最大エネルギー波長に合致したα-Fe2O3の光電極高機能化を目指す。極性結晶の有する自発分極ンドギャップの狭帯化による近赤外光領域の利用拡張、さらに従来の太陽電池では着目されなかったスピン秩序制御による励起キャリアの長寿命化を実現し、新しい高機能太陽光エネルギー変換素子の創製を目指すこととした。 太陽光エネルギーを用いたエネルギーハーベスティングとしては、(1)太陽電池に代表される太陽エネルギーを電気的エネルギーに変換する利用と、(2)太陽光エネルギーを用いて、例えば水を水素と酸素に分解するという光水分解である。(1)のアプローチについては、Ge置換によるFe価数制御(2価、3価)によるp型,n型制御は順調に進んでいる。さらに今年度の特筆すべき研究成果としてFe2O3とIn2O3の混晶系を作製し、外部電源を用いずに直接光水完全分解を試みた。50%混晶系において、可視光照射において水素:酸素=2:1の直接光水分解を確認した。TiO2を用いた紫外光による水分解は従来から知られているが、可視光による光水分解は本系で初めての成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
スピン太陽電池による有効電荷蓄積機能付与、およびスピン三重項利用による高効率化を目指した研究を実施。先行実験により(APL,103(2013)212404, APL,99(2011) 242504)FeOおよびFe3O4薄膜において、p,n伝導に世界で先駆けて実証した。この成果を基に、p型層が磁性半導体から成るpn接合において光エネルギー変換を試みた。照射を行うと、スピントンネリングの整流効果によりスピン蓄積が期待され、非磁性pn接合より高効率の起電力が予測される。p,n伝導制御のポイントはGe(4+)の置換量に応じて、Fe(2+)とFe(3+)量を制御することにある。p-n接合の界面において電荷の相互拡散が発生し、良好なpn接合を得ることができなかった。現在I層を挟んだp-i-n接合を作製し、データ蓄積中である。さらに従来にない新しいアプローチとしてFe3+の持つ大きなスピン(S=5/2)の秩序制御により、磁気抵抗異方性制御(光キャリア輸送能向上)、並びに格子歪誘起結晶場による三重項状態を活用した励起キャリア長寿命化を試み、電子―正孔分離効率の向上による高効率化を試みている。 特に今年度の特筆すべき研究成果として、水の直接光分解というプラスアルファの成果をFe2O3とIn2O3の混晶系においてを達成できた。外部電源を用いずに直接光水完全分解することは従来TiO2を用いた紫外光による水分解が良く知られている。当グループはFe-In50%混晶系において、可視光照射において水素:酸素=2:1の直接光水分解を確認した。可視光による光水分解は本系で初めての成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
極性結晶層による水素発生(水の直接光分解)の 先行実験により、Rh:α- Fe2O3酸化鉄半導体電極を用いると、対向極(Pt)において水素が発生することを検証済みである。しかしα- Fe2O3単独では伝導帯側の還元電位が水分解電位より低いため、水素発生には外部電圧印加(0.5V程度)が必要であった。この問題を解消するため、類縁鉄酸化物のウスタイトFeOとのヘテロ接合や、極性材料(例えばP63/mc)ZnOあるいは(Zn,Mg)O、(Zn,Co)Oの自発分極、ピエゾ分極の内部バイアス電圧印加効果により、外部からの電圧印加無しで水素発生を試みた。これにより“電力貯蔵機能を備えた太陽電池“が可能となる。水素は燃焼後には、水のみが生成する究極のクリーンエネルギー源であり、本申請で開発された技術は、温暖化ガスを全く排出しないクリーンなエネルギー循環システム実用化に向けて大きく加速されることが期待できる。 ヘマタイトα- Fe2O3単独では伝導帯側のバンドエネルギー位置から、水素発生には少し(0.5V程度)外部電圧印加が必要であるが、ZnO、(Zn,Cd)Oや、類縁の鉄酸化物であるウスタイトFeOとのヘテロ接合により、バイアス印加無しで対局Pt電極から水素発生した(図参照)。極性層無しに比べると小さな印加電圧となったが、無バイアス電圧は未だ達成されていない。しかしこの機構による “電力貯蔵機能を備えた太陽電池“は、今後重要なエネルギー変換素子となると思われる。水素は燃焼後には、水のみが生成する究極のクリーンエネルギー源であり、本申請で開発された技術は、温暖化ガスを全く排出しないクリーンなエネルギー循環システム実用化に向けて大きく加速されることが期待できる。
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Causes of Carryover |
経費削減により予定より実験にかかる費用が少なくできたため。
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Research Products
(29 results)