2018 Fiscal Year Research-status Report
Innovation of mapping technology of coastal topography and sediment size in sediment-cells by using UAV
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17K18898
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 愼司 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (90170753)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田島 芳満 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (20420242)
下園 武範 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (70452042)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 漂砂 / 海浜過程 / UAV / 粒径調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、低コストで機動性の高い迅速マッピング技術を開発し、効率的な海岸保全対策に資するとともに、沿岸域のMDAを飛躍的に革新することを目的としている。2018年度は、当初計画通り、UAVを用いた現地調査を実施し、波浪と海底地形のモニタリング、海浜陸上地形のモニタリング、海浜構成砂礫材料のマッピングのそれぞれについて研究を進めた。 波浪・海底地形および海浜陸上地形の推定に関しては、静岡県福田海岸、駿河海岸、千葉県九十九里海岸、御宿海岸でUAVから沿岸域の直下撮影を実施した。ビデオ映像をコマごとの画像に分割し、レンズや画角のひずみを補正したうえで、各画像を同一の絶対座標にマッピングした。砕波を検出するフィルターを用いて砕波峰線を抽出し、砕波峰線の時空間変化を追跡した。その結果、砕波頻度の空間分布は、極めて不均質であることが判明し、海岸地形と強く関連していることが示唆された。 海浜構成材料のマッピングに関しては、千葉県九十九里海岸、静岡県富士海岸、静岡清水海岸、宮崎県宮崎海岸で現地調査を実施した。調査では、地表からの高度を10mの一定としてUAVから直下撮影した連続画像を用いて、海浜地形と海浜砂礫粒径との関連を考察した。その結果、砂礫粒径は、漂砂源から徐々に細かくなる傾向があるのに加えて、構造物上手の堆積域では細粒化、下手の侵食域では粗粒化することが見いだされた。また、養浜が実施されている区間では、人工的に投入された土砂の影響が強く顕在化していることも確認された。これらの基礎的情報から海浜の土砂移動過程を分析する際には、これらの人為影響についても一定の時間・空間スケールにおいて配慮する必要があることが定量的に示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画においては、波浪と海底地形のモニタリング、海浜陸上地形のモニタリング、海浜構成砂礫材料のマッピングのそれぞれについて、UAVを活用したモニタリング技術を開発することとしている。これまでの2年間で、斜め撮影されたビデオ映像が海底地形の推定に有用であることが示されたが、俯角が小さくなる沖合い部分で経験的な係数を導入する必要があり、精度が低かった。2018年度の研究では、UAVを用いた直下海面の撮影を行い、これから砕波峰線を抽出する技術を開発した。これにより、砕波確率を介した海底地形推定の精度が向上することが期待できる。 海浜の構成砂礫の粒径に関しては、細砂で覆われている九十九里海岸から、こぶし大の礫が散在する富士海岸まで、特性が大きく異なる海岸で貴重なデータを取得することができた。特に、九十九里海岸では、2年前に異なる季節に取得したデータと比較するデータが得られ、漂砂特性に大きな変化がないことが確認できた。一方、富士海岸や静岡清水海岸では、激しい海岸侵食を受けて、養浜による対策が20年以上の期間にわたっているため、海岸地形や海浜の粒径に、その影響が強く顕れていることが確認できた。これらに加えて、放水路、離岸堤、ヘッドランドなどの構造物による漂砂捕捉の影響は、海浜地形のみならず、海浜の粒径分布にも顕れていることが示唆された。UAVによる海浜情報マッピングにより、これらの各種時間スケール・空間スケールの影響を分離して議論できるようになることは、当初の予想を超える成果であり、最終年度にあたる次年度においては、計画されている実施項目を着実に実施するとともに、開発した技術を応用して海浜過程解釈の精緻化にも挑戦できる段階にあり、これらを総合的に勘案すると、研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、最終年度に当たるため、3つの項目に関して残された研究実施項目を着実に進めるとともに、研究のとりまとめを行う。UAVを用いた現地調査としては、これまで対象としてきた海岸よりも、さらに時空間スケールの大きな高知海岸を対象とした調査を行う。高知海岸では、仁淀川、物部川からの土砂供給の減少が数十年にわたって継続し、さらに漁港や構造物による漂砂遮断の影響もあり、10km以上の大スケールで海浜過程が変化していることが想定される。例えば、かつては下手海岸でも見られた五色石が、今では河口部のみにしか見られず、海浜粒径にも大きな変化があると推測されるが、定量的な分析は不足している。本年度の研究では、これまでの研究で開発された砕波峰線の抽出技術、海浜砂礫粒径の分析技術、海浜ゴミの分離技術などを組み合わせるとともに、広域海岸への適用を図り、実践的かつ汎用性の高い海浜情報マッピング技術として確立する予定である。
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Causes of Carryover |
H30年度までの研究で、宮崎海岸、九十九里海岸、富士海岸、静岡清水海岸で特性の異なる多様な海岸で調査を実施し、多彩なデータを取得することができた。一方、開発するモニタリング技術の汎用性を高めるためには、さらにスケールの大きな海岸でのマッピングにも適用可能であることを確認する必要があるが、調査地の選定と事前調査・調査の許可申請に時間を要することが判明し、これを次年度に実施することとした。なお、その後、スケールの大きな海浜過程が観察できる対象海岸として、高知海岸を選定し、これまでに事前調査と調査許可申請の準備を完了している。経費は、撮影範囲の広い新たなUAVの購入や、定点設置カメラの購入などに充てる予定である。
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Research Products
(2 results)