2017 Fiscal Year Research-status Report
渋滞の奏でる音楽―予兆検知に向けた交通流可聴化理論の構築
Project/Area Number |
17K18912
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
塩見 康博 立命館大学, 理工学部, 准教授 (40422993)
|
Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
|
Keywords | 可聴化 / 交通流 / 聴覚ディスプレイ / 音響合成 / サウンドヒューマンインタラクション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,交通に関わるデータを音響化することで,渋滞の発生や事故などの予兆検知,事故や故障車の存在,あるいは特異イベントなどの異常検知,行動検知と可聴化による音響フィードバック効果に基づく行動変容手法の可能性について検討をするものである.研究期間の初年度である2017年度には,SonificationやAuditory Displayに関する文献調査,データの音響化を実現するシステムを構築するとともに,音響化するデータの整理を行った.文献調査に関しては,ICAD(International Conference of Auditory Display)の活動をフォローするとともに,関連する文献の収集や研究者へのヒアリング・意見交換を行った.その結果,Sonificationアプローチが交通の文脈で適用された事例はないこと,Sonification技術の実務への展開性という点において交通分野は適していることを確認した.また,音響生成システムに関しては,音響変換が可能な各種プログラム言語(R,Matlab,Python,Mathmatica,SuperCollider)などの特徴や拡張性を調査し,サンプルデータの音変換性能を確認した.その結果,音響合成に特化したプログラム言語であるSuperColliderが音響生成の点ではユーザービリティが高いこと,その一方で,プログラム言語としての特殊性のため,データの読み込みや音響データのファイル出力などの点で工夫が必要であることがわかった.最後に,音響と行動のフィードバックについては,サウンドヒューマンインタラクションとしてコンセプトを整理・明確化し,初段階として環境音が歩行者交通流に及ぼす影響評価のための実験計画を策定した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では渋滞・事故発生の予兆検知のみを対象とする予定であったが,先行研究者とのディスカッションを経て,可聴化アプローチの実務展開を考慮し,サウンドヒューマンインタラクションに関する研究も含めて検討することとした.これはデータの可聴化を前提とし,移動体の状況を可聴化の上,それに対して行動意図を考慮したエフェクトをかけた上で移動体にフィードバックすることにより,行動変容を図るものである.それらを含めて総合的に研究の基盤形成はできており,おおむね順調に進展していると判断した.
|
Strategy for Future Research Activity |
残る2カ年では以下の研究課題に取り組む. 2018年度:交通流の定点観測データ,および移動体データを対象に,渋滞発生前の予兆を検知可能なデータの音変換アルゴリズムを構築する.また,構築したアルゴリズムに対する聴覚実験を行い,交通状態変動の知覚可能性を検証する.これらは実観測データ,およびシミュレーションデータに対して適用する予定である.一方,サウンドヒューマンインタラクションの観点より,音環境と歩行者交通流の関係性の定量評価を行う.具体的にはコントロールされた環境下において,テンポや快度のことなる音楽に対する集団での歩行者交通流特性,すなわち交通容量や自由走行速度などの指標の変動特性を定量的に評価する. 2019年度:予兆検知の観点では,前年度に構築したアルゴリズムに基づき,機械学習による予兆検知手法を構築する.これにより,人間の直感に整合した予兆検知の自動化が可能となる.一方で,可聴化アルゴリズムとサウンドヒューマンインタラクションの融合化を図ることも目指す.具体的には,オンラインで収集される運転挙動データを可聴化し,それをドライバーにフィードバックすることによる運転挙動の安定化や,歩行行動のオンライン可聴化とそれに基づくフィードバック方法の開発を行う.前者についてはドライビングシミュレーターを用いた実験,後者についてはスマホデバイスの開発とそれに基づく実験を行う. 最後に3カ年に渡る研究成果を取りまとめる.特に,今後は実フィールドへの展開を視野にいれた研究開発へとつなげていく予定である.
|
Causes of Carryover |
初年度は音響生成のためのPCやモニタなどのツールの購入に特化して研究費を使用した.次年度,アルゴリズム開発のための他研究者との打ち合わせに伴う研究旅費,学会参加のための旅費,当初の研究計画には予定していなかった歩行者実験実施のための謝金や会場使用料,それに伴う各種機材購入費として利用するために,次年度への繰越をした.
|
Research Products
(1 results)