2017 Fiscal Year Research-status Report
制振構面における合成梁の応力伝達による崩壊メカニズムの解明
Project/Area Number |
17K18914
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
木村 祥裕 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 教授 (60280997)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 制振構面 / 床スラブ / スタッド / H形鋼梁 / 応力伝達機構 |
Outline of Annual Research Achievements |
既往の制振構面における合成梁を対象とした研究は,スタッドやコンクリートの非線形挙動やコンクリートスラブの有効幅の材長方向への分布などの課題が残されている。加えて,既往の研究は,鉄骨梁の下フランジに引張軸力が作用する正曲げ時の挙動に注目しており,負曲げ時の合成梁の挙動は十分精査されていない。 合成梁に負曲げが作用した際,スタッド及びコンクリートスラブには,曲げモーメントとせん断力の組合せ力が作用するため,スタッドの剛性・耐力は一方向のせん断力のみを対象とした従来の押し抜き試験では評価できない。そこで,実現象を再現した繰返しせん断を受ける床スラブの実験モデルを構築する。試験体は,押し抜き載荷試験体と同様,H形鋼梁とスラブ,スタッドで構成される試験体である。パラメータはスタッド剛性,スタッド耐力,スラブ強度,スラブ幅,載荷履歴である。 スタッド剛性は,コンクリートスラブが弾性時とコンクリートスラブがひび割れ後の耐力劣化時で異なると考えられる。そのため,コンクリートとスタッド間の応力伝達機構を解明し,コンクリートスラブとスタッドの支圧効果及び合成効果の評価を行うことで合成梁の負曲げ作用時の詳細な履歴モデルを構築する。また,合成梁に負曲げが作用した際の鉄骨梁への圧縮強度は,コンクリートスラブの引張力の負担量に依存するため,コンクリートスラブが負担する応力の幅方向の範囲(有効幅)とその分布,有効幅の材長方向への分布について検討する必要がある。そこで,コンクリートスラブの有効幅に対してスタッド剛性,スタッド耐力,コンクリートスラブ剛性の違いが与える影響をコンクリートスラブの材長方向及び面外方向に貼付したひずみゲージから得られるひずみ分布により明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに,予備実験を含む26体の載荷実験を終了し,スタッド剛性,スタッド耐力,スラブ強度,スラブ幅,載荷履歴といった各パラメータに対する最大耐力や塑性変形能力の関係を明らかにしている。また,構築した数値解析モデルにより,コンクリートスラブ-スタッド―H形鋼梁の応力伝達機構を明らかにしており,ひび割れ発生位置やひび割れ後の応力再配分を解明しつつある。 ただし,コンクリートスラブ-スタッド―H形鋼梁の部分架構実験を行う予定であったが,数値解析でモルの構築を優先させ,予備解析を行い,曲げせん断を受けるときのスタッドによるコンクリートスラブ,H形鋼梁への応力伝達機構を明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
制振構面において床スラブが取りつく鉄骨梁の応力伝達機構を,実建物における合成梁をモデル化した,詳細な数値解析モデルによって明らかにする。数値解析は,3次元有限要素法による弾塑性大変形解析である。既往の研究では,鉄骨梁と床スラブを梁要素とし,スタッドを介して応力伝達した実用的なモデルが提案されているが,床スラブの幅方向の(平面的な)応力分布やスタッドの降伏後の応力伝達機構は必ずしも明らかにされていない。 そこで,鉄骨梁を4節点シェル要素,コンクリートスラブを8節点ソリッド要素,スタッドを8節点ソリッド要素,ダンパーを4節点シェル要素で構成し,スタッドをコンクリートに埋め込み拘束することで合成梁を再現する。また,コンクリートスラブ下面と上フランジの接触,鉄骨柱とコンクリートスラブの支圧を接触解析により緻密に再現する。材料特性は,鉄骨梁,鉄骨柱,ダンパーを複合硬化則,コンクリートスラブをひび割れによる耐力劣化を考慮した応力-歪関係により与える。また,載荷実験については数値解析と同様の試験体を製作することとする。数値解析より,載荷実験で網羅できないパラメータについても,載荷実験で計測できないスタッドの高さ方向への負担せん断力の分布やコンクリートスラブとスタッド間の支圧力などの詳細なデータを明らかにする。 今年度得られた知見である繰返しせん断断実験より得られた履歴性状を適用しながら,ダンパーから梁に作用する軸力がコンクリートスラブに伝達されるまでの応力伝達機構と合成効果により負曲げ時に鉄骨梁に作用する軸力をスタッド剛性・耐力,鉄骨梁曲げ剛性・耐力,ダンパー軸力比等のパラメータに対して明らかにする。得られた解析結果を用いて,合成梁に負曲げが作用した際の圧縮軸力評価式を構築する。
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Causes of Carryover |
実験計画はおおむね順調に進めてきた。ただし,当初予定していた部分架構実験の代わりに要素実験を行い,スタッド剛性,スタッド耐力,スラブ強度,載荷履歴などの各パラメータに対するコンクリートスラブ-スタッド―H形鋼梁の応力伝達機構を解明することに重点をおき,解明した。現在,部分架構モデルにおけるコンクリートスラブ-スタッド―H形鋼梁の応力伝達機構に関する予備解析(有限要素解析)を行い,実験パラメータの選定が終わったことから,次年度早々にコンクリートスラブ-スタッド―H形鋼梁の部分架構載荷実験を行う予定である。また,同時に当初の予定である,制振構面床スラブ付きH形鋼梁の部分架構モデルによる弾塑性大変形解析及び載荷実験と合成梁の作用圧縮軸力評価についても,上述の曲げせん断実験より得られた履歴性状を適用しながら,ダンパーから梁に作用する軸力がコンクリートスラブに伝達されるまでの応力伝達機構と合成効果により負曲げ時に鉄骨梁に作用する軸力をスタッド剛性・耐力,鉄骨梁曲げ剛性・耐力,ダンパー軸力比等のパラメータに対して明らかにする。得られた解析結果を用いて,合成梁に負曲げが作用した際の圧縮軸力評価式を構築する。
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