2021 Fiscal Year Research-status Report
軽度認知症高齢者のBPSD緩和・安定に寄与する住空間設計指針の実装検証
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17K18923
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
阪田 弘一 京都工芸繊維大学, デザイン・建築学系, 教授 (30252597)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 健二 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (30363609)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2023-03-31
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Keywords | 軽度認知症 / 住環境 / 在宅 / 自立 / 服薬 / 実装 / 介護負担 |
Outline of Annual Research Achievements |
自宅での生活を維持することが困難となると考えられる、認知症を発症した高齢者(=軽度認知症高齢者)を対象とし、(1)本人が、自宅での自立的な生活を可能な限り維持すること、(2)家族の介護の負担を軽くし、在宅介護の限界を遅らせること、を目標とし、住環境整備の観点から可能なアプロー チとして、本人の中核症状の発生に伴う周囲や自身との関係のもつれから起こると考えられる「BPSD(=行動・心理症状)」の安定・緩和と、それにともなう介護負担の緩和を狙いとしている。この狙いに寄与すると考えられる住環境構成要素を実態調査から特定、実装実験により効果検証し整備指針を探る。 今年度は、コロナ禍で現場での研究活動が困難な中、目標である本格的実装につながる知見を得るため、協力者のリスクが少ないと考えられる次のような軽微な実装による調査を実施した。 当初仮説として、自宅か通所施設で大半を過ごす認知症高齢者が発症前には当たり前に体験していた、外部空間の1日の時間経過の疑似的な体験が、失われつつある望ましい生活リズムの獲得、BPSDの安定・緩和につながるのではと考え、高齢者護施設において、朝・昼・晩の状態を再現するような照度調整可能な照明の導入を行ったが、明確な効果が確認できなかった。そこで、当初の仮説を外部空間の体感の創出ということに拡張し、①施設内の庭で過ごすことのできるデッキ空間をしつらえ、一日の生活プログラムにその空間で過ごす時間を持つか持たないか、②庭と室内を仕切る遮光カーテンの調整により、外部空間を視覚的に体感するまたはしないか、が、認知症高齢者の行動にどのような影響を与えるのか、について調査を行った。結果、外部空間との接触の機会を持つか持たないかで、症状に明確な効果は確認できなかったが、行動面において機会を持った方が無為や居眠りの時間が減少し、会話などの積極的な行動が増加したことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍でありながら、当初仮説の一つを見直し、外部空間との接触の機会の有無が軽度認知症高齢者に及ぼす影響についての知見を得られたことは成果であり、住宅への本格的実装につながる有用な知見であると考えらえる。 ただし、コロナ禍で協力者を得ることは困難であり、軽度認知症高齢者の自宅への、効果的かつ現実可能な実装計画の策定までには至っておらず、総体的にはやや遅れていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの成果と反省を踏まえつつ、軽度認知症高齢者が住まう個人宅への実装可能性を念頭に置き、家族と同居する軽度認知症高齢者宅における適切な見守り環境の確保による、家族の介護負担の減少と軽度認知症高齢者のQOLの向上を目標に、本組織が提案する可変式建具の改良と設置、および外部空間との接触が可能な造作や空間の使い方の工夫に関する詳細な知見を得るための実装計画の実施を進める。なお、コロナ禍においても実施可能性の高い、これまでの協力施設での実施を前提とする。
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Causes of Carryover |
昨年度同様に、高齢者施設での、すでに実装している提案要素の改良も含めた実装実験を主軸に、当初計画を立てていたが、コロナ禍のため内容を縮小せざるを得ず満足に進めることができなかった。 そこで、次年度を最終年度と定め、これまでの成果とコロナ禍での実施可能性を念頭に、以下の2つの実装実験の実施に使用する計画である。 1)昨年度までの実験結果を踏まえ、介護負担減少が期待される可変式建具のユーザビリティに配慮した改良を施し、実装計画の実施を進める。2)本研究の当初の提案要素であった、望ましい照明環境の検討を見直し、外部空間との接触の機会を生み出すようなしつらえや使い方の工夫に関して、住宅に援用できる詳細な知見が得られるような実装計画の実施を進める。 なお、リスクを考慮しコロナ禍での調査実施のノウハウもある高齢者施設での実験とする。
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