2018 Fiscal Year Research-status Report
子どもの高い光感受性と概日リズムを考慮した夜の光環境の指針開発に向けた研究
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17K18926
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
樋口 重和 九州大学, 芸術工学研究院, 教授 (00292376)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻村 誠一 鹿児島大学, 理工学域工学系, 教授 (10381154)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 子ども / メラトニン / 水晶体 / 光 / 概日リズム / 睡眠 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度も昨年度に引き続き、水晶体の光透過率を測定する方法について、シンガポールの研究機関(Singapore Eye Research Institute)の共同研究者を日本に招聘し、装置の開発を進めた。具体的には、眼に光を照射したときに現れる角膜や水晶体による反射像であるプルキンエ像を利用し、水晶体前面での反射像と水晶体後面での反射像それぞれの明るさから水晶体の光透過率を計算した。測定に用いる波長は8波長(430~600nm)で、一回の測定に要する時間は5秒程度と短く、被験者の負担の軽減も実現できた。この測定システムを用いて、10代から30代の協力者を対象に予備的な測定を行った結果、加齢に伴う透過率の低下を確認できた。また、短波長の光において透過率の減衰が大きいことも確認できた。一般的に水晶体の混濁度合い判断する場合は、散瞳剤を点眼して、瞳孔を散瞳させた状態で行うが、この装置を利用すれば散瞳させない状態でも測定できる可能性が示された。散瞳剤を使わずに測定できれば、特に子どもの測定においてメリットとなる。一方、高齢者のように、加齢性縮瞳によって通常の状態での瞳孔が小さいく、さらに水晶体の混濁が進んでいる場合には、反射光が弱くなったり、重なったりして、既存の方法では正確に測定できないという問題も明らかとなった。この測定装置で測定された水晶体の光透過率の値の妥当性を検証するための方法としては、細隙灯顕微鏡を用いて水晶体の混濁程度の判定を眼科医の協力を得て行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
概日システムにおける子どもの高い光感受の原因として性水晶体の光透過率が関係していると考えている。本研究では水晶体の光透過率を実測できる装置を独自に開発しているがまだ完成に至らなかった。したがって、水晶体の光透過率を考慮した上で、夜の光の影響を調べるための実験が実施できなかった。一方で、光の波長特性を考慮したメラトニンの抑制を調べた実験についての成果をまとめて論文にすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
水晶体の光透過率の測定結果の妥当性を確認するために、細隙灯顕微鏡を用いて水晶体の混濁程度の判定を眼科医の協力を得て行う予定である。その後、被験者個人個人の水晶体の光透過率を考慮した上での、夜の光曝露実験を行う予定である。その際には光の非視覚的な作用(メラトニンの抑制や瞳孔の対光反応)だけではなく、視覚的な作用(明るさ感や色の見え方)なども同時に調べる予定である。
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Causes of Carryover |
水晶体の光透過率の測定装置の開発に時間がかかり、今年度予定していた子どもと大人の光感受性の比較として、夜の光曝露によるメラトニンの抑制を見るための実験が遅れた。したがって、今年度分として予定していた被験者謝金、実験者謝金、メラトニンの分析料を次年度の実験として使用すこととした。
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