2017 Fiscal Year Research-status Report
Development of a wave buoy for global observation system
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17K18934
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
早稲田 卓爾 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (30376488)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小平 翼 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 助教 (60795459)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 波浪観測 / 台風・爆弾低気圧 / Argo / 防災 / 海氷 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、台風や爆弾低気圧など強風下での波浪、北極海夏季開放海域での波浪など厳しい条件下も含む、全球規模での展開を想定した、頑強な漂流型の波浪計測ブイの開発を行うことが目的である。初年度の成果は以下のとおりである。 【既存のArgoシステムについての調査】 国内で現在Argoの制作を行っている1社との打ち合わせを行い、浮力調整システム、筐体の大きさ、重量分布などについて情報を得た。また、海外のArgo製品複数についても調査を行った。その結果として、開発要素が大きく、既存システムの流用は難しいとの結論に至った。 【波浪計測センサーについての調査】 既存の製品で使われている加速度センサーなどについて調査を行った。製造技術者と複数回協議を行い、IMU(inertial measurement unit)を用いた波浪センサーユニットについての詳細情報を得た。その結果、センサーユニットの 小型化が可能であり、別途用意した筐体(浮体)に装着することが可能であることを確認した。 【観測の可能性】台風・爆弾低気圧が通過する海域もしくは冬季海氷に覆われる北極海での使用に関する検討を行った。強風下では設置そのものが難しくなる。従って、今後は航空機による投下などの可能性も検討する必要がある。そのためには、筐体及びセンサー機器の衝撃に対する耐久性などが課題となる。一方、氷海では海氷下に停留する際に、誤って浮上し海氷に衝突することを避ける必要があることが判った。既存のice-Argo(豪州)などに搭載されている温度センサーが有用であることが判った。このことは、国内のArgo制作会社にも確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
【既存のArgoシステムの利用】 当初想定していたArgoフロートの利用について、特に国内の製造会社と複数回打合せを行った結果、水中での深度保持のためには新規開発要素が大きく、既存の技術(特に浮力調整)の流用が難しいということが判った。従って、本研究課題での対応は難しい。また、表層における浮体の特性のみを検討するための筐体の貸与も難しいことが判明した。この点において、研究計画に遅れが生じた。 【波浪計測センサー】 また、波浪計測センサーについては、現在表層ブイで主流となっているのが、加速度計、傾斜計、ジャイロを組み合わせたIMU(inertial measurement unit)の利用である。これまでに利用実績のあるIMUを利用した波浪センサーについて、小型化したユニットの仕様を定めることができた。耐圧容器についても、市販製品での対応により数100mまでの没水は可能と考えられる。 【浮体について】浮体の運動制御については、Argoの浮力調整機能の応答時間などが必ずしも波浪計測には対応していないことが判ったため、より簡単な制御方法を独自に開発すべきであることが判った。また、当初の予定からは、二つの独立した課題があり、それぞれを個別に検討すべきである。初めに、Argoの通常天候下での利用を想定した場合、スパー型浮体の波浪への追従性、砕波など強い非線形波動に遭遇した際の挙動などを調査すべきことが判った。次に、悪天候下での利用を想定した場合は、中性浮力による位置保持が大きな課題である。これは、緊急時の対応ということで検討すべきである。
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Strategy for Future Research Activity |
【既存のArgoシステムの利用】Argoシステムで水中での位置保持を行うことは難しいことが判った。したがって、Argoの利用では水密容器に格納した波浪センサーを付加することが妥当と思われる。一方、海氷回避のためには既存のice-Argo技術が使える。したがって、今後は水密容器の開発を進める。 【波浪計測センサー】 波浪センサーは小型化したユニットを購入し、水密筐体に格納して水中での動作実験を行う。圧力の計測が必須なので、圧力センサーの取り付けを検討する。そして、水槽実験及び平塚総合実験塔での現場観測により、動作確認を行う。 【検討事項】 長期利用のための電源特性の把握、浮体の制御方法などが検討事故うである。中性浮力浮体の波浪に対する応答特性については、既存のシステムでは難しいことが判ったが、理想的な浮体を用いた簡便な水槽実験などを実施する予定。また、Argoそのものの波浪に対する応答特性としては、スパー型の浮体を製作して様々な波浪条件下でのテストを行う。特に砕波時の応答特性が課題となる。
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Causes of Carryover |
当初予定では、初年度に波浪計測ユニットとArgo型フロート筐体を購入する予定であった。しかしながら、Argo型フロートメーカーから筐体のみの購入が難しく、また、波浪計測ユニットのArgoへの取り付けも容易でないことが判った。そのため、研究計画を再検討し、波浪計測ユニットについては、初年度に仕様を定め、発注納品は2年目に行うこととした。一方、フロートについては既存の浮体を利用することが難しいことから、簡便な浮体の設計制作を2年目に実施することとした。
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