2017 Fiscal Year Research-status Report
昆虫の飛行能力の計測を実現可能にするAttached Device法の開発
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17K18940
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
砂田 茂 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (70343415)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
得竹 浩 金沢大学, 機械工学系, 准教授 (80295716)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 昆虫の飛行 |
Outline of Annual Research Achievements |
金沢大学では、ハチを対象とし、本研究の目的そのものを達成するための研究を行った。ハチの胸部に先尾翼を付加し前進飛行させ、その際の飛行を定量的に把握するために、以下の準備を行った。(A)2台の高速度カメラを利用し、モーションキャプチャー装置を構成した(B)モーションキャプチャーによるハチのピッチ運動の測定精度を明らかにするために、ハチの絵をサーボモータで振動させ、モーションキャプチャーで測定した値とポテンショメータで得た値とを比較した。その結果、3%程度の誤差での測定が可能であることが分かり、本研究における測定精度としては十分であることが明らかになった。 ハチの飛行試験から、前進速度が遅いときピッチ角が周期的に振動する運動をし、前進速度が速くなったときピッチ角が発散し飛行できなくなることが分かった。前者の運動における振動周期、減衰率、及び先尾翼に起因する安定微係数の解析値から、ハチの固有のダイナミクスの2つのパラメータを求めた。さらに、両運動の前進速度の境界値から、コントローラの安定限界を求めた。 名古屋大学では、金沢大学の研究成果の理解を深めるための研究を行った。(1)上記実験で得られた羽ばたき翼の運動と、剥離渦による大空気力係数を認めた計算モデルから、ハチの固有のダイナミクスの2つのパラメータを計算した。2つパラメータのうちの一方で、測定値と計算値に符号の違いが見られた。先尾翼を取り付けた際、翼のフェザリング運動を通常の飛行時の運動から大きく変え、先尾翼を含めたシステムで機体の安定化を図った結果とも考えられる。(2)cmサイズの固定翼機を用い、重心位置を変化させた際の縦の運動の観測を行った。ハチの飛行実験結果をより深く理解するための実験である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
金沢大学での実験ではハチを対象とするために、ハチの個体差、実験を繰り返すことによるハチの学習等、実験を進めるにつれて配慮するべき事項が現れ、現在までの結果を得るために多くの労力を要した。しかし、時間とともに有意な結果が得られる様になってきており、順調に進んでいると考えている。一方、名古屋大学の解析では、ハチの自重を支えるために、定常の空気力の10倍以上の空気力を仮定しており、解析結果の検討が必須の状況である。CFDの研究を進める他大学の協力も必要な状況である。また、小型固定翼機の飛行実験は、一定の成果を得るために平成30年度に精力的に進める必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
金沢大学では、以下の研究を行う。 H29年度はハチに板状の先尾翼を取り付け,飛行試験を行った.先尾翼によりハチ固有のダイナミクスが変わり,それに適応した飛行が観測できる.しかし先尾翼はハチの迎角や角速度についての微係数を変えるものであり,ダイナミクスの次数は変わらない.質量物を抱えて飛行するときに重心移動により安定微係数が変化するのとほぼ同等の効果であり,ハチに内在するフィードバック制御系のゲインのチューニングで対応できると推測できる.そこでH30年度はより複雑で高度な演算をハチに課すために,空気力や慣性力によって弾性変形する付加物を取り付けて飛行試験を行う.その結果ハチ固有のダイナミクスはその次数や構造の点で大きく変化する.ハチが安定な飛行を試みる場合は,その変化したダイナミクスを理解してそれに対応したフィードバック制御系を再構成する必要がある.様々なダイナミクス変化を引き起こす付加物を取り付け飛行を解析することで,ハチのモデル化能力,演算能力,学習能力などのいままで注目されてこなかったハチの特徴を明らかにする. 名古屋大学では、以下の研究を行う。 ハチの固有のダイナミクスの2つのパラメータを計算したが、準定常の空気力の10倍以上の非定常空気力を仮定しトリムをとっている。この様な大きな非定常空気力が必要になった要因には、翼の羽ばたき運動のデータが正確でない、計算モデルが正確でない、の2つが考えられる。前者を解決するために、金沢大学で翼運動の正確なデータを取得すること、又はこれまでのハチの羽ばたき運動のデータを精査し利用することのどちらかで対応する。この検討を行った後、準定常の空気力の10倍以上の非定常空気力の仮定が必要であった場合は、他大学にCFDによる検討を依頼する。固定翼機の飛行実験においては、ハチの飛行実験のより深く理解するための実験として継続する。
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Causes of Carryover |
名古屋大学では、ハチの飛行の分析、及び固定翼機の飛行解析を行った。そのために、コンピュータ、高速度カメラ、実験材料を使用した。高速度カメラは本予算で購入したが、コンピュータ、実験材料は既存のもので対応できた。その結果、残額が生じた。
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