2018 Fiscal Year Research-status Report
Gossamer宇宙構造物を対象とした革新的シミュレーション技術の創出
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17K18941
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
中篠 恭一 東海大学, 工学部, 准教授 (60408028)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | Isogeometric解析 / 膜構造物 / 張力場理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,昨年度開発中であった膜面構造解析用IGA計算コードにおける収束性の問題を解消するため,以下の解析手順にしたがって非線形構造解析を実行できるコードを開発した.1.張力未導入の状態における剛性マトリクスの特異性を回避するため,初期状態の膜面に対してDynamic Relaxation法を適用して釣合い解近傍の近似解を求める.2.1で求めた近似解を初期値としてNewton-Raphson法により厳密な釣合い解を求める. 上記解析手順にしたがった計算コードにより収束性の問題は根本から解決し,張力場理論に基づいた膜面のIsogeometric解析が可能となった.開発したIGAコードを用いて柔軟膜面の非線形構造解析を行い,当初予測していた通り制御点群の変位によってCrease状の変形が膜面上に発現することを確認した.なお,上記の計算コードでは,Dynamic Relaxation法を導入した結果として,剛性マトリクスの算出に多くの時間が費やされることになる.開発した計算コードには,この問題に対処するためのアイデアも導入されている.さらに当初計画には盛り込まれていなかった項目として下記成果を得た. 1.線形弾性体に加え,非圧縮Mooney-Rivlin体に対するIGAコードを開発した. 2.研究過程で,柔軟膜面のIsogeometric解析においては対称境界条件の扱いが重要であることが判明した.これに対処するため,仮想制御点を導入して対称境界条件を満足させる手法を新たに考案した.また,同手法をIGA計算コードに組込み,所期の解析性能が達成できることを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定の研究実施計画では本年度, 1. IGAシェルモデルの実装とこれを用いた非線形構造解析の実施 2. IGA膜モデルを用いた場合のcrease変形解析性能の評価 の2項目を実施する予定であった. 上記2項目中,本年度に達成できたものは後者の項目のみであり,本年度は当初予定計画を全て実施できていない. ただし当初予定計画には含まれていなかった項目として,1.Newton-Raphson法とDynamic-Ralaxation法を組み合わせた解析法の確立,2.膜材へのMooney-Rivlin則の適用,3.仮想制御点を用いた対称境界条件の処理法の確立,の3項目を達成しており,これを勘案すると研究計画はおおむね順調に進展していると判断できる.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の達成項目により,薄膜構造物の非線形構造解析を数値的に安定して実施できる環境が整備されたといえる.今後は,当初計画で予定されていたIGAシェルモデルの実装を行って,極薄柔軟膜面のリンクル解析を実施する.IGAリンクル解析の結果を,従来型手法である有限要素解析の結果と比較して,IGAのリンクル解析性能を評価する予定である.
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Causes of Carryover |
申請者は本年度の1年間,所属大学の「長期研究期間制度」の適用を受け,スウエーデン国にて在外研究を行った.本在外研究は研究課題の申請時には予期されていなかった事項であり,本年度で差額が生じた理由は,在外研究期間中に必要となる研究支出の不確定性が大きかったことが要因である. 次年度は所属大学に研究拠点が戻るため,次年度使用額と翌年度分額を合わせて,主に計算機環境の充実を図る予定である.
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