2017 Fiscal Year Research-status Report
株式市場の対称性の破れ度計測による完全データ駆動型相転移予測法の開発
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17K18959
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
高田 輝子 大阪市立大学, 大学院経営学研究科, 准教授 (30347504)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 非対称度 / 相転移予測 / 投資家行動 / 株式バブル / データ駆動型 / ノンパラメトリック |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、投資家集団が生み出す相転移現象としての株式バブルを対象にし、データから最大限の情報抽出を行うことにより相転移現象特有の統計パターンを明らかにし、それを利用した高精度相転移予測を実現することである。予測対象時系列のみを入力情報とし、そこに含まれる相転移現象に本質的な特徴抽出により、完全データ駆動的な予測方法の提案を行う。特に注目するのは「系の非対称度」である。本年度の目標は、NYSE指数を用いて予測に有効な相転移現象特有な統計的パターンの抽出を行うために以下①~③を行うことであった:①高頻度NYSE時価総額加重平均株価指数の作成及び株価収益率確率密度推計、②NYSE指数収益率確率密度形状からの相転移現象に本質的な特徴変数の選別、③選別した重要変数間の相関構造パターンを明らかにする。 本年度は、以下①~③のように上記目標を達成したことに加え、その副産物として、こうした非線形的な投資家行動が生み出すアノマリーについての新しい研究結果も④~⑤のように得た。 ①指数作成・密度推計:ニューヨーク証券取引所(NYSE)市場全体指数を時価総額加重平均で作成したことに加え、時価総額群別指数(大型株指数、中型株指数、小型株指数)も作成した。各指数の確率密度推計を行った。 ②特徴変数の選別:相転移前兆現象として、推定した確率密度形状の非対称度の有効性とそれに影響を与える投資家のリスク回避度を重要因子として選別することができた。 ③相関構造パターン解明:非対称度と投資家のリスク回避度の代理変数との関係についていくつかの新事実を発見できた。 ④ニューヨーク証券取引所(NYSE)市場における小型株効果の経時変動パターンと影響因子の解明(経営研究2018) ⑤ウェブマイニングを用いた日本の投資家センチメント分析によるIPOパズルの説明(IREF, in Press)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要欄に示した通り、交付申請書に記載した本年度の研究達成目標はほぼ達成され、想定外の成果も得られたため、概ね順調なペースで進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
相転移予測方法の開発に向けて、以下①~④を順次行う。ある程度の精度の確保ができると見込める場合は、より単純な方法の開発に注力する。精度の確保が難しいと判断された場合は、より複雑度の高い次の予測法の開発に比重を移す。
①モーメント統計による株式市場トレンドの上昇/下落予測:確率密度形状を要約するモーメント統計とシンプルな機械学習による分類器を用いたトレンド方向判別・予測を行う。 ②確率密度形状の特徴を用いた相転移予測:相転移予測のための市場状況判別を、モーメント統計ではなく、非対称度をはじめとする確率密度形状の特徴により行う。 ③確率密度形状マッチングによる相転移予測:確率密度形状全体のマッチングにより市場安定度を計測する方向で、相転移予測を行う。 ④重要変数間相関構造パターンマッチングによる相転移予測:局所的相互情報量推定値を用いて市場状況を判別し、相転移予測を行う。
平成30年度購入予定のデータについては、入手し次第、クリーニングを行い、既に得られた分析結果をアップデートする。
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Causes of Carryover |
初年度にクラスターマシンを購入する予定であったが、初年度の研究における計算の過程で、特にマシンに負荷がかかる要因が判明した。当初予定よりもクラスターマシン向けの予算を増額し、仕様デザインを当初版より変更することのメリットが、マシン導入時期の遅れによるデメリットを上回ると判断した。2年度目の半ば頃までにはクラスターマシンを購入する予定である。
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Research Products
(2 results)