2017 Fiscal Year Research-status Report
高密度に水素を含む多原子イオンの電気陰性度評価法の構築
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17K18972
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
折茂 慎一 東北大学, 材料科学高等研究所, 教授 (40284129)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 水素 / 電気陰性度 / 錯体水素化物 / 錯イオン / 陽イオン / イオン伝導 / 水素貯蔵 |
Outline of Annual Research Achievements |
錯体水素化物は、配位子場効果により遷移金属などに複数の水素が共有結合した「錯イオン」、ならびに「金属陽イオン」からなる代表的な高密度水素化物であり、両者のイオン結合により形成される無機塩の一種である。これらの錯体水素化物の化学的・物理的性質を体系的に整理する新たな指標を整備するために、従来は“単体元素”の電子供与能として定義される電気陰性度を、「錯体水素化物の熱的安定性と陽イオン電気陰性度を指標とする独自の評価手法」により、“複数水素と遷移金属からなる多原子イオン”である錯イオンへと合理的に拡張する。これにより、特に遷移金属を含む錯体水素化物にて見出されつつある高密度水素貯蔵機能ならびに高速イオン伝導機能を格段に高めるとともに、関連する材料科学を飛躍的に発展させる。平成29年度は、「遷移金属錯体水素化物における平均陽イオン電気陰性度と標準生成エンタルピーの線形相関」にもとづいて、残りの自由度である錯イオン電気陰性度を系統的に評価する研究を実施した。各種錯イオンを含む遷移金属錯体水素化物群の標準生成エンタルピーについては、Inorganic Crystal Structure Database (ICSD)などの結晶構造データベースを用いてモデルとなる既存の遷移金属等を含む錯体水素化物群を選定して、その陽イオン元素を系統的に置換して構造最適化した。最適化された構造については、生成エンタルピーも算出して、その合成条件(熱力学的平衡条件)も評価した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多様な錯体水素化物における錯イオン電気陰性度を系統的に評価する研究は予定どおり進展している。その検証を目的とした錯体水素化物合成のための出発原料の入手が困難であったためこの研究だけは翌年度に持ち越す予定であるが、概して順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、平成29年度に続き、錯イオン電気陰性度を系統的に評価する研究を実施する。さらに高確度で合成が見込まれる錯体水素化物群の合成を試みるとともに、評価結果等の妥当性を高める。実際に得られた錯体水素化物については、水素位置を含めた構造解析を実施し、それらを元に第一原理計算による標準生成エンタルピーの再評価を実施すると同時に水素貯蔵・イオン伝導特性も評価し、結果を“錯イオンの周期表”の 観点から整理することで、エネルギー関連材料としての錯体水素化物の開発指針を構築する。
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Causes of Carryover |
錯イオン電気陰性度の評価結果の検証を目的とした錯体水素化物合成のための出発原料の入手が困難であり、そのための技術補佐員の採用も見送ったため、物品費ならびに人件費・謝金の一部が未使用となった。平成30年4月時点でこれらの出発原料の入手が可能となる旨の確証を得たため、この研究を平成30年度内に実施する。
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Research Products
(12 results)