2017 Fiscal Year Research-status Report
Understanding of the hardening mechanism in FCC based ordered structures induced by interstitially ordered solute atoms
Project/Area Number |
17K18977
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
木村 好里 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (90262295)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 金属間化合物 / 固溶強化 / 塑性変形機構 / ナノインデンテーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では侵入型溶質原子による固溶強化機構の体系的な理解を最終ゴールに据え、第一歩として、稠密構造である面心立方FCC基調のE21型規則構造の金属間化合物に着目し、特定の格子位置に規則固溶する侵入型炭素原子に起因する固溶強化機構を解明することを本研究の目的としている。浮遊帯域溶融法の一方向凝固を用いて作製したL12 Ni3AlとE21 Ni3AlCの単結晶合金に対してナノインデンテーション試験を行い、ヤング率とナノ硬さの合金組成ならびに結晶方位の依存性を測定した。また、荷重-変位(P-h)曲線に不連続なバースト変位として発現するpop-inの挙動を解析して、臨界荷重Pcとバースト変位Δhの関係を整理した。ここでPcは塑性変形の開始に必要な転位の生成または増殖、Δhは転位の密度または易動度に関連している。Ni3AlとNi3AlCのいずれにおいても、Ni-richあるいはAl-richの組成(非化学量論組成)が機械的性質に影響を及ぼすことが知られている。マイクロビッカース硬さ評価では化学量論組成からNiまたはAl濃度が離れるほど、また炭素濃度が高くなるほど硬さが上昇する傾向が観察できるが、ナノインデンテーションによるナノ硬さ評価では同様の傾向が顕著には現れないことが分かった。塑性変形開始に相当すると考えられるPcの値に関しては明瞭な組成依存性が観察されなかった。ここでpop-in挙動は転位の生成または増殖という偶発的なイベントに対応しているためPcとΔhの値には大きなバラツキが見られる。Pcは蓄えられた弾性エネルギーの大小を意味するので、PcとΔhが比例関係にあることから、解放された弾性エネルギーの大小に応じて活動する転位の密度あるいは易動度がΔhとして反映されていると解釈できる。また、(001)と(123)で比較した限りにおいて明瞭な結晶方位依存性は確認されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で述べているとおり、当初の研究計画で中心に据えていたL12 Ni3AlとE21 Ni3AlCに関する実験を進めており、今後の推進方策を具体的に計画できている。侵入型溶質固溶元素が塑性変形に及ぼす影響を解析して固溶強化機構を理解することを目標に掲げているが、これは極めて難しいチャレンジであり、実際に研究を進めるなかで予想以上の難易度が具体的に分かってきた。そこで、置換型溶質固溶元素が規則構造の空孔サイトを占有できる合金系として、ハーフホイスラーZrNiSnとホイスラーZrNi2Snを候補材料として選択し、同様のナノインデンテーション試験を行って効果的に比較検討を進めている。主要合金系のL12 Ni3AlとE21 Ni3AlC、比較合金系のZrNiSnとホイスラーZrNi2Sn、それぞれの実験結果の進捗を俯瞰的な視点で議論できる場として、7月に北海道大学で開催されるナノインデンテーションに関する国際会議に参加することにしている。研究協力者である大学院生2名が、それぞれの合金系についてポスター発表(計2件)を申し込んでいる。以上の理由から、概ね順調に研究を推進できていると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で設定した主要合金系のL12 Ni3AlとE21 Ni3AlC、比較合金系のZrNiSnとホイスラーZrNi2Sn、それぞれに対してナノインデンテーション試験を実施することにより、pop-in挙動の解析から整理したPcとΔhの関係を考察し、塑性変形開始に必要な応力と転位の生成または増殖の関連性の理解に努めているところである。さらに塑性変形挙動を理解するためには、実際に活動しているすべり系を特定することが必須であると考えられる。そこで透過型電子顕微鏡(TEM)を用いてナノインデンテーション後の変形組織の観察を行う。ナノインデンテーションによる圧痕直下の変形組織を観察するためには、通常ではFIB(Focused ion beam)加工によって圧子の押し込み方向に平行な試料断面を薄膜化してTEM観察に供する。この方法では観察領域が狭く限定されるため難易度が高い。そこで確実に変形組織を観察する手法として、板状試料の片面にナノインデンテーションまたはMicro-Vickersの圧痕を複数導入し、反対側の面から研磨してTEM薄膜を作製することを試みる。ナノインデンテーションの第一人者である物質・材料研究機構の研究者に研究協力者として、本研究課題のこれまでの成果に関するディスカッションをしてもらった。一方、米国オークリッジ国立研究所においてナノインデンテーションの著名な実績を有する研究者、米国ペンシルバニア大学における金属間化合物の機械特性に関する権威である教授の先生、研究代表者の3名が一堂に会して、本研究課題(その着想となった研究成果を含める)に関する専門性の高いディスカッションを行う機会を持った。興味深い研究課題であるという認識で一致し、将来的にオークリッジ国立研究所の研究者と一緒に共同研究として発展させる方向で積極的な検討を進めている。
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Causes of Carryover |
「今後の研究の推進方策」に記述したように、これまでの研究成果に対する専門性の高いディスカッションを行って本研究課題の方向性を確認すること、将来的な国際共同研究への発展性を探ることを目的とした海外出張(米国ペンシルバニア大学)を平成29年度の3月に計画した。該当する3者のスケジュール調整を検討するなかで、平成30年度の5月上旬の実施が最適であるということが分かり、海外出張の時期を変更したことが主な理由である。すでに海外出張を済ませており、有益な情報の収集と共同研究に向けた合意ができた。旅費の概算に余裕をもたせた額が次年度使用額となっていた。
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