2017 Fiscal Year Research-status Report
New ultrahigh hardness material realized by octahedral coordinated SiN and partial ordering of atomic arrangement
Project/Area Number |
17K18979
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
鈴木 常生 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (00313560)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 遷移金属窒化物 / 酸窒化物 / 強制固溶 / 積層不正 |
Outline of Annual Research Achievements |
金属の切削加工は、もの作りにおける重要な工程の1つであり、切削工具には一般に硬質 薄膜がコーティングされている。しかし難削材の出現や、切削油を使わない(低環境負荷)切削のために、コーティング用材料には50GPa以上の高硬度が要求されている。これまでに既存物質であるCrNに対して構成元素を他元素に置き換えて、種々の新物質群を合成してきた。すなわち①多結晶Cr(N,O)薄膜およびエピタキシャル成長CrO薄膜、②エピタキシャル成長(Cr,Si)N薄膜である。それぞれの高硬度化の起因は、①:原子配列の部分規則化(積層不正)、②:CrN中に内在する6配位SiNであり、メカニズムは全く異なる。本研究では、①と②を組み合わせ、超高硬度を有する3新物質(Cr,Si)(N,O)を合成する。 レーザーアブレーション法によって薄膜を合成した。手法は、1E-6Pa以下に真空引きした超高真空チャンバー内で、O2+Nラジカルを供給し、(Cr+Si)回転ターゲットに対して、YAGレーザーの3倍波レーザー(355nm)を照射することにより、Cr-Si-N-Oの4元系薄膜を作製した。基板は、格子定数が近いMgOを選択した。MgO基板は成膜前に加熱処理することにより表面のMg(OH)2を除去した。成膜時の基板温度は500~700℃を検討した。作製した薄膜の組成をラザフォード後方散乱分光法で評価した結果、目的の4元素(Cr, Si, N, O)が含まれていることを確認した。結晶構造をX線回折で評価した結果、CrNに対して、SiとOがそれぞれ置換した(Cr,Si)(N,O)であることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(Cr+Si)回転ターゲットにレーザー(YAGの3倍波:355nm)を照射することによって発生させたアブレーションプラズマを、MgO基板上に堆積させた。その際、O2+Nラジカル雰囲気を使用し、成膜時の酸素分圧を厳密に制御することにより、Cr-Si-N-O薄膜を作製した。基板温度を500~700℃に変化させて薄膜を作製した。作製した薄膜について、ラザフォード後方散乱分光法によって組成を分析した結果、目的の4元素で構成されていることが確認された。X線回折によって結晶構造を確認したところ、NaCl型と思われる回折図形を得た。またX線回折のΦスキャンにより、90゜ごとに4回対称性を持つことが確認できたことから、薄膜は基板に対してエピタキシャル成長した単結晶ライクな構造を持っている事が確認できた。つまり新物質(Cr,Si)(N,O)が合成に成功したと考えられる。CrN結晶中にSiおよびOが固溶していることから、Siは6配位のSiNであると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
作製した(Cr,Si)(N,O)薄膜は、エピタキシャル成長しているものの、積層不正が発生しているかどうかを確認する必要がある。まず、作製した薄膜を収束イオンビーム加工を使って透過電子顕微鏡観察用の試料を作製し、微構造を観察する。またナノインデンターによって薄膜の硬度を測定する。
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Causes of Carryover |
わずか1,380円の残額である。完全に0にするための予算消化は行わず、次年度に繰り越すことにした。
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