2017 Fiscal Year Research-status Report
双結晶法を用いた半導体結晶転位の特性評価と機能開拓
Project/Area Number |
17K18983
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中村 篤智 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (20419675)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
栃木 栄太 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (50709483)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 転位 / 結晶性半導体 / 双結晶 |
Outline of Annual Research Achievements |
結晶性半導体材料において,転位は電子構造上の特異点となりうるため半導体としての機能特性をしばしば低下させる.そのため,結晶性半導体においては転位密度低減の研究が数多くなされてきた.その一方で,転位が本当に悪い物性を発現するのか否かについては不明な点が多い.実際,転位にはバーガースベクトルや極性など様々なタイプが存在し,どの転位が半導体の特性を悪化させているのか分かっていない.そこで,本研究では,結晶方位制御を施した半導体結晶の基板2枚を直接接合により一体化させて得られる「双結晶」の接合界面を利用して,酸化物半導体における転位の構造と電気伝導特性を評価することに挑戦する. H29年度は主としてZnOおよびSrTiO3を対象に双結晶作製を試み,形成された接合界面の構造解析を行った.ZnOではb=1/3<2-1-10>のbasal転位が形成されるように{2-1-10}面のOFF基板を作製し,それら2枚を接合することで小傾角粒界を作製した.作製された粒界の電子顕微鏡観察から,basal転位が2つのショックレータイプの部分転位に分解していることが明らかとなった.分解構造の特徴として,(0001)面に沿ったグライド型の分解構造をとっていた.これはZnOにおいてbasal転位がグライド型であることを初めて発見した結果となった.この結果については第一原理計算によりエネルギー的な検討を行った.(0001)面の積層欠陥エネルギーが{2-1-10}面の積層欠陥エネルギーよりも低いことが,ZnOがグライド型の分解構造を取る原因であると推察された.さらに,SrTiO3についても小角粒界の作製に成功した.現在,構造解析を進めているところである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【半導体双結晶の作製状況】 代表的な酸化物半導体である,ZnOおよびSrTiO3について双結晶の作製を試みた.小傾角粒界を有するZnOのa面双結晶についてはこれまで作製されたことがなかったが,温度と荷重を制御することで,規則的なbasal転位列からなる小傾角粒界の作製に成功した.一方SrTiO3について,従来作製されてきたSrTiO3双結晶では接合界面のSrが欠損しやすい問題があった.これに対して1000℃での接合および1500℃でのポストアニールを行うことで,Sr欠損の問題の少ない,エネルギー的に安定な粒界を有するSrTiO3双結晶の作製に成功した. 【転位構造解析の状況】 ZnOは代表的な半導体材料でありながら,最も安定な転位であるbasal転位の構造はこれまで不明であった.本研究では,双結晶法によりbasal転位列を人工的に形成することに成功した結果,先進顕微鏡法によりその転位構造を解析することが可能となるとともに,第一原理計算から特徴的な分解構造の起源を解明することにも成功した.SrTiO3についても{001}面および{011}面に沿った小傾角粒界を人工的に作製することに成功した.現在のところ,従来から知られている[001]転位や[011]転位に加えて,大きなバーガースベクトルを有する巨大転位が形成されていることが確認している.そこで,その詳細な構造解析を進めている.
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Strategy for Future Research Activity |
【様々な双結晶の作製と先進電子顕微鏡法による構造解析】 H29年度にSrTiO3の双結晶作製に成功したので,作製する小傾角粒界のタイプを広げて,さらに構造解析を進める.具体的には傾角やねじれ角の異なる双結晶を作製し,その構造解析を行う.また,転位の物性の起源を調べる際には,その原子・電子構造を調べることも重要となる.そこで,先進電子顕微鏡法により転位コア近傍の結合状態を調べる. 【半導体転位の電気的特性評価】 小傾角粒界を双結晶法で作製した場合,粒界では同種の転位が規則的に並ぶことになる.そこで,粒界の電気伝導特性を測定することで,転位1本当たりの物性の抽出が可能となる.また,転位列と垂直方向に電気伝導特性を測定することで,転位をまたぐ伝導の特性についても評価できる.そこで,小角粒界を有するSrTiO3双結晶を利用して,転位電気伝導特性を評価し,その電気伝導メカニズムを解明していく.また,ねじりを有した転位の電気伝導特性についても評価し,特異な転位構造が電気伝導特性に与える影響も評価する.さらに,還元処理や異種元素添加による,転位物性の変化の抽出についても挑戦する.
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Causes of Carryover |
実験が順調に進み,今年度購入予定の試料が減少したために次年度使用額が生じた. 研究成果を論文化する際に印刷費が必要と見込まれるため,生じた次年度使用額は論文投稿費用に利用する予定である.
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Research Products
(11 results)