2017 Fiscal Year Research-status Report
グラファイト構造マグネシウム合金へのソフト化学的ドーピングとその超伝導体特性
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17K18986
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
北田 敦 京都大学, 工学研究科, 助教 (30636254)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | MgB2 / ドーピング / ソフト化学 / 電気化学 / 有機電解液 / 薄膜試料 / 臨界電流密度Jc |
Outline of Annual Research Achievements |
層状化合物であるMgB2は, 金属系では最高の超伝導転移温度39 Kをもち, 銅酸化物高温超伝導体に比べて加工性に富むなどの利点がある.超伝導特性改良の手段の一つとしてドーピングが挙げられる. しかし, MgB2へのドーピングは, その固溶域が狭くドープ量を増やせないという問題があり,安定相が得られる高温固相反応によるドーピングには限界がある.かたや,電池反応のように, 低温で準安定相が得られるソフト化学的な方法を用いれば, 母相の基本骨格を保ったまま層間のイオンを脱挿入することが期待できる. そこで, ソフト化学的手法によってMgB2の実質的な固溶域を拡張し,準安定相を用いた high-dopeを行うとともにその超伝導特性を評価するのが本研究である. 本年度は、MgB2の粉末試料と薄膜配向試料について実験した.まずMgB2粉末試料についてはMgB2からのMgの脱離,つまりホールのドーピングが可能であることが示唆されたものの,試料に酸化皮膜が存在し,その部位での導電性の低さのために目的の反応が困難であると結論した. そこで粉末試料の代わりに,酸化皮膜を抑制した導電性の高いMgB2薄膜配向試料を用いたところ,電気化学的なドーピングに成功し, かつ超伝導特性(臨界電流密度Jc)も評価できた.MgB2試料として, Si基板に対してMgB2結晶のc軸が垂直に配向した, 厚さ約200 nmの薄膜をドーピングに供した. 電気化学ドーピングを行うための電解液として, 3種類の有機系電解液を用意し,うち2種類はホールドープを,残る1種類はLiドープを試みた. その結果,Liドープの場合はNi保護膜が反応を阻害し, 残念ながら試料への異種元素ドーピングは起こらなかったのに対して、ホールドープの場合は,X線回折において新しいピークを確認し, MgB2の結晶構造が変化したと考えられる結果を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MgB2への電気化学的ドーピングに成功し、一部の試料について転移温度Tcだけでなく臨界電流密度Jcの測定にまでこぎつけた。現時点でのデータは少ないが、研究計画で述べた「MgB2への電気化学ドーピングと超伝導特性の調査」に道筋をつけることができた。残りの研究期間で、本年度に見出した薄膜試料を用いる電気化学的手法によって様々なドープ量の試料作製を行い、そのJc測定を行うことで、ドープ量と超伝導特性の関係が明らかになると期待できる。さらに、当初の研究計画からの発展形である「リチウム異種元素ドープ」についても試したが、こちらは反応しないことを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度前半で用いた粉末試料では酸化皮膜のために再現性が良くないことがわかったが、本年度後半に見出した、酸化皮膜の少ない薄膜試料を電極として用いれば再現性良く実験できることが明らかになったので、今後この薄膜配向試料を用いて実験を行う。ドープ量と臨界電流密度Jcとの関係についてさらに調査し、本年度は試せていないドープ量についての試料作製とその超伝導特性の評価を実施する。これによってドープ量と超伝導特性の詳細を明らかにする。もともと「計画通りに進まない場合」に行うつもりであった異種元素ドープは、本年度に検討した結果、困難であることがわかったので、来年度は計画通りMgの脱挿入によるドープに集中する。
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Causes of Carryover |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額は異なった。しかし研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。
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