2017 Fiscal Year Research-status Report
新しい方法による三重項・三重項対消滅の定量的評価とそのメカニズムの解明
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17K18993
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
小林 隆史 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10342784)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 三重項三重項対消滅 / 有機EL素子 / ホスト・ゲスト系 |
Outline of Annual Research Achievements |
三重項三重項対消滅(triplet-triplet annihilationまたはTTA)は電子交換によって生じるため、波動関数が重なり合うほど(数オングストローム程度に)接近した分子間で起こると予想される。しかし現実には、離れた分子間でのTTAも報告されている。例えば、ホストマトリックス中に低濃度でドープされたゲスト分子間ではデクスター半径の10倍以上の間隔がありながらTTAが起こるとされている。このようなホスト・ゲスト系は有機EL素子の発光層として用いられ、TTAは高電流注入時における効率低下の一因となることが知られている。本研究では、ホスト・ゲスト系のTTAについて (1)その対消滅レートを正確に決定する方法を構築し (2)またTTAのメカニズムそのものを明らかにする ことを目指している。本研究で特に注目するのは、高効率有機EL素子に用いられる発光材料系であり、それらは励起光強度の増大とともにフォトルミネッセンスがスペクトルシフトするという特徴のあることが研究代表者の過去の研究により分かっている。 平成29年度は、このスペクトルシフトを実験的に丁寧に調べるとともに、レート方程式を用いた詳細な解析も行った。その結果、当初の期待通り、このスペクトルシフトの原因はTTAであることが確認された。また、このスペクトルシフトを解析することでTTAによる対消滅レートを決定できることも分かった。つまり、その精度については改善の余地が残されているものの、本研究の主目的の一つ(上記の1)はほぼ達成できたと言える。これが初年度の研究実績の概要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
理論的予測と良く一致する実験結果が得られたため、次年度に取り組む予定であった解析を前倒しして実施した。その結果、本研究目的の一つである「TTAの対消滅レートの決定法の構築(当初計画では2年目の予定)」が完了した。このことから「当初の計画以上に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、当初計画では1年目に取り組む予定であった実験項目に取り組むとともに、対消滅レート決定の精度向上、TTAのメカニズムの解明に取り組む。これらに加え、研究期間に余裕が生じるようであれば、分子構造と対消滅レートの相関についても明らかにしたい。
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Causes of Carryover |
初年度は、当初計画の一部の実験を中断し、次年度実施予定の数値解析を前倒しした。そのため、中断した実験に必要な備品費や消耗品費がそのまま次年度使用額として残った。次年度は、中断していた実験を再開する予定であるため、次年度に配分される助成金と合わせても適正に執行される見込みである。
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