2018 Fiscal Year Research-status Report
第一原理に基づく画期的定量モデリングによる析出分散強化型耐熱超合金の理論設計
Project/Area Number |
17K18998
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
佐原 亮二 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 構造材料研究拠点, 主幹研究員 (30323075)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大野 かおる 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (40185343)
長田 俊郎 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主任研究員 (50596343)
戸田 佳明 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 構造材料研究拠点, 主幹研究員 (60343878)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 微細組織制御 / 第一原理計算 / フェーズフィールドモデル / 繰り込み / ポテンシャル繰り込み |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、耐熱合金であるニッケル基合金の基本となる二元系合金・NiAl合金を例に取り、実用温度領域(~1473K)におけるγ(FCC)相中へのγ'(L12)相整合析出物分散による強化機構の定量理論予測可能なモデルを、電子論に基づき構築することである。本年度は、ポテンシャル繰り込みの手続きにより、第一原理を格子モデルを経てフェーズフィールドモデルへ連結する手法の検討を行った。このような第一原理計算のフェーズフィールドモデルへのマッピングの基礎基盤構築は、本課題申請当初の予定には無いものであったが、これが実現すれば、経験的な熱力学パラメータを用いる事なく、微細組織時間発展の理論予測が可能となる。今年度は、繰り込みを数値的に行うための計算条件を詳細に検討した。さらに、FCC格子を有するモンテカルロ(MC)法のプログラムコードについては、スーパーコンピュータで実行するために並列化を行い、各計算条件で熱平衡状態が実現する長時間シミュレーションを実行中である。本MCプログラムコードに、繰り込みポテンシャルを多体相互作用として用いる事で、相転移の情報を定量的に評価する。今後は、統計精度をあげるため異なる疑似乱数初期値を使用した複数サンプルの計算を行い、熱平衡状態が得られるまでの長時間シミュレーションを遂行し、熱力学的特性の定量評価を行う予定である。更に、本年度までに構築した二元系モデルを拡張する事により、他系への適用の検討を始めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で扱う耐熱合金であるNixAl1-x系について、FCC格子への繰り込みの手順の整備を行った。つまり、純金属(純Ni, 純Al)、Ni3Al, NiAl, NiAl3という5つの規則相について、第一原理計算により繰り込みポテンシャルテーブルの作成をおこなった。2x2x2個のセル(32個の原子を含む)から構成されるスーパーセルを導入し、その中心位置にある原子について、格子点を中心としてその周囲を1000点近いグリッドに分割し、原子位置を変えながら第一原理計算を行った。得られた結果を用いて部分状態和に関する積分を行う事で、繰り込みの効果の温度依存性を求めた。今年度は、数値的積分を実行する際の計算条件の検討を詳細に行った。はじめに格子モデルにマッピングするため、テスト計算により5つの相の格子定数を決定した。次にグリッドの点数およびグリッド間隔の決定を行い、可能な限り精度が良い数値的積分を行った。空間の対称性に基づいて既約領域を求めるプログラムを作成し、繰り込みの膨大な計算量の軽減を図った。得られた繰り込みポテンシャルを用いて、モンテカルロシミュレーション(MC)を行った。その際、実用上興味深い高Ni濃度側(0.75≦x≦0.90)において、1300KにおけるMCを検討した。この濃度領域においては、γ'単相領域~γ/γ'二相共存領域の相転移、およびγ/γ'二相共存領域~γ単相領域の相転移が実験的に観察されている。更に、本繰り込みの手法を空孔を含む擬三元系へ拡張し、同様の手続きを行った。得られた局所的な自由エネルギーをCahn-Hilliard方程式に利用することで、実験パラメータフリーのフェーズフィールド計算を遂行した。
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Strategy for Future Research Activity |
TTP図やフェーズフィールド法など、古典的な描像に基づく連続体モデルに対する一般的な問題として、計算に必要なパラメータの正当化、実験との定量的な議論や特性予測の困難さが挙げられる。本研究により、これらの問題点を抜本的に解決し、整合析出物分散による耐熱超合金強化機構の、世界最高水準の精度を有する理論定量予測モデル構築を目指す。今後は計算精度を挙げた解析を行い、本年度までに構築した二元系モデルを拡張して、他の系への適用などを考えている。
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Causes of Carryover |
平成30年度は、ポテンシャル繰り込みの手続きにより、第一原理をフェーズフィールドモデルへ連結する手法の検討を行った。本研究は本課題申請当初の予定には無いものであったが、これが実現すれば、実験値等の熱力学パラメータを用いる事なく、微細組織時間発展の理論予測が可能となり極めて画期的である。これに伴い、さらなる内容の検討が必要となり、もう1年間の延長が必要になった。
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