2017 Fiscal Year Research-status Report
ZIFsの特異な吸着特性を利用した相間移動吸着剤開発
Project/Area Number |
17K19001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
増田 隆夫 北海道大学, 工学研究院, 教授 (20165715)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉川 琢也 北海道大学, 工学研究院, 助教 (20713267)
中坂 佑太 北海道大学, 工学研究院, 助教 (30629548)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 化学工学 / 反応・分離工学 |
Outline of Annual Research Achievements |
金属イオンと有機配位子との配位結合により形成される金属-有機構造体の一種であるZIFs(Zeolitic Imidazolate Frameworks)は、石油化学の分野で広く用いられるゼオライトに似た結晶構造を有しており、ガス分離剤や触媒としての応用が注目されている。本研究では、従来の吸着剤にはないZIFsの特異的な吸着特性を駆使し、ZIFsに対する環状炭化水素の吸脱着速度を制御することにより、新しい分離プロセス構築に挑戦している。平成29年度は金属種、有機配位子の異なるZIFsの合成、環状炭化水素吸脱着特性評価、ZIFsの一種であるZIF-8を用いた環状炭化水素の吸着速度評価を目的とした。 1)金属イオンおよび有機配位子を含む溶液を調製し、ZIFsを合成した。良好な結晶性が得られたZIF-8、ZIF-67、ZIF-90を主対象として平成29年度の研究に使用した。 2)ZIF-8を吸着剤に用い環状の含酸素炭化水素、不飽和炭化水素、飽和炭化水素の吸着等温線を測定することにより吸着特性評価を実施した。不飽和結合数、酸素数により吸着特性が異なることを確認した。また、吸着する分子のサイズが大きくなることで吸着量が著しく低下した。これより、ZIFsは自身が持つ細孔径よりも大きい分子を吸着できる一方で、その分子径には上限があることが示唆された。 3)40℃の温度下において、ZIFsへの1,4-ジオキサンの液相吸着実験を行った。粒子径の異なるZIF-8を吸着剤に用いた吸着実験により、粒子径が小さいほど吸着速度が速くなるため、短時間で平衡に達することを確認した。また、この時の拡散係数を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は金属種、有機配位子の異なるZIFsの環状炭化水素吸脱着特性評価ならびにZIFsに対する環状炭化水素の吸着速度評価を目的とした。既報の合成手法を参考に6種のZIFsを合成した。XRDを用いた構造解析により各ZIFsの構造が得られていることが確認された。ZIF-8を中心に、環状の含酸素炭化水素(1,4-ジオキサン、オキサン)、不飽和炭化水素(ベンゼン、トルエン、トリメチルベンゼン)、飽和炭化水素(シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン)の吸着等温線を測定するとともにこれらの吸着特性を評価した。不飽和、含酸素環状炭化水素は飽和環状炭化水素に比べ吸着量は高くなる結果が得られた。 1,4-ジオキサンを吸着物質に用い、40℃での液相吸着試験を実施した。粒子径の小さいZIF-8は粒子径の大きいZIF-8に比べ速く吸着平衡に達したことから、ZIFs粒径制御による吸着速度制御が可能であることが確認された。また、気相、水相における1,4-ジオキサンのZIFs粒子内拡散係数を測定し評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で目指す新規分離プロセスでは、吸着速度だけでなく脱着速度の情報が重要になる。平成29年度に実施した吸着過程に加えて脱離過程に対しても速度評価を進める。また、吸着、脱離過程の情報に基づき、本研究目的であるZIFsの水相―有機相間移動による水溶液中有機物の分離回収プロセスの可能性を明らかにする。
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Causes of Carryover |
円滑に研究を推進できたため、ZIFs合成ならびに吸着実験に用いる有機試薬、実験器具の使用量が抑制され次年度使用額が発生した。平成30年度は新規分離プロセス検討を行うためにまとまった量のZIFsや有機試薬が必要となるため、次年度使用額はこれら消耗品費に充てる。また、研究調査を積極的に行い、本研究目的達成に向けて精力的に研究を進める。
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