2017 Fiscal Year Research-status Report
レクチンを用いた次世代in situ架橋ハイドロゲルの開発
Project/Area Number |
17K19006
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 大知 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 准教授 (50447421)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 誠一 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (40723284)
津本 浩平 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (90271866)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | ハイドロゲル / レクチン / TSG-6 / 炎症 / リンクモジュール |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では創傷治癒で形成されるレクチン/ヒアルロン酸複合体ゲルを模倣したin situ架橋ハイドロゲルを実現し,MSCなどの細胞源を用いずとも,抗炎症効果や増殖効果を持つ組織工学・再生医療用のinjectableな足場材料の開発を目標としている.本年はコントロール実験の系を確立するべく,ヒドラジド修飾ヒアルロン酸、及びアルデヒド修飾ヒアルロン酸から成る2液性のシッフ塩基によるin situ架橋するヒアルロン酸ゲル:HAXおよびカルシウムイオンで架橋可能なアルギン酸ゲルに,ラット骨髄由来MSCを封入し,ゲルの外部に放出されるTSG-6の放出量を測定した.HAXから放出されるTSG-6がほぼ濃度ゼロになるのに対してアルギン酸から放出されるTSG-6濃度は封入培養しない系と同等の濃度となった.さらにマクロファージが分泌するTNF-α濃度から,HAX封入MSCではTSG-6を放出しないために抗炎症効果がないのに対して,アルギン酸封入MSCの系では有意なTNF-α濃度の低下が見られ,TSG-6の影響が大きなものと推察された.本研究はコントロール実験にとどまらず,ゲルに封入したMSCからTSG-6を持続的に放出する研究として重要な結果である.さらに本年度は,昨年度から着手しているTSG-6の大量発現系の確立に引き続き取り組み,再生医療用のスキャフォールドとして用いることができる新たなヒアルロン酸系ハイドロゲルの開発を実現する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目である本年は,まずコントロール実験の系を確立するべく,2液性のシッフ塩基により架橋するヒアルロン酸ゲルであるHAXおよびカルシウムイオンで架橋可能なアルギン酸ゲルに,ラット骨髄由来MSCを封入し,さらにLPSで刺激したマクロファージRAW246.7とゲル封入MSCを共培養することで,MSC封入ゲルから培養液に放出されるTSG-6濃度とIL-10濃度をELISAで測定した.IL-10の放出濃度に関して2つのゲルの間での差は有意差があるもののそれほど大きくなかった一方で,TSG-6の放出濃度には大きな差が見られた.すなわちHAXから放出されるTSG-6がほぼ濃度ゼロになるのに対してアルギン酸から放出されるTSG-6濃度は封入培養しない系と同等の濃度となった.さらにマクロファージが分泌するTNF-α濃度から,HAX封入MSCではTSG-6を放出しないために抗炎症効果がないのに対して,アルギン酸封入MSCの系では有意なTNF-α濃度の低下が見られ,TSG-6の影響が大きなものと推察された.このMSC封入アルギン酸ゲルをラット腹膜癒着モデルに適用して,癒着防止効果を検討したが,材料の癒着防止効果を凌駕することはなかった. 近年の研究ではTSG-6を修飾している糖鎖が,その活性や血中半減期に大きな影響があることがわかってきている.このため,TSG-6及びリンクプロテインを大量発現するにあたって,既存の大腸菌でなく,CHO細胞を利用した大量発現系を組む準備として,TSG-6遺伝子をトランスフェクションし,TSG-6を発現させる準備実験を行った.
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Strategy for Future Research Activity |
大腸菌培養でTSG-6を大量に取得することは難しい点,あるいは体内動態が糖鎖修飾によって大きく変化するために,CHO細胞を用いた系が検討されつつある.このため本研究でもTSG-6及び,これを組み替えたリンクプロテインを開発し,既往の報告と同程度である4mg/Lの発現量を目指す.さらにTSG-6とHAあるいはHAXと組み合わせた新たなハイドロゲルを開発する.粘弾性測定やITC(等温滴定型カロリメトリー)を用いて,ヒアルロン酸あるいはヒアルロン酸誘導体とTSG-6の結合状況の詳細な解析を行い,ゲル物性への考察を行っていく.本研究の最終目標である再生医療への応用を実証するために,当初の軟骨細胞からターゲットを変更して,骨再生足場材料への応用を目指す.1年目で実績が得られたMSC封入ゲルと比較を行いながら,本研究の優位性と特徴を明らかにする.
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