2017 Fiscal Year Research-status Report
Formation and characterization of heterocellular aggregates prepared with cellular furoshiki
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17K19016
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
神谷 典穂 九州大学, 工学研究院, 教授 (50302766)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 細胞培養 / ハイドロゲル / 細胞集塊 / 機能化 / 酵素 / 増殖因子 / 酸化還元応答性 / 細胞シート |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、酵素反応を介した酸化還元応答型ハイドロゲル形成を利用し、異なる形態と次元を有する細胞集塊からなるミニ組織構造の形成を目標とする。本年度は、3次元球状細胞集塊スフェロイド形成と、2次元細胞シート形成を、同一足場材料を用いて実現するための基礎検討を実施した。細胞接着能を有するゼラチン数種類に対し、化学修飾によりチオール基を導入し、これが導入されたハイブリッド型酸化還元応答ハイドロゲルを調製した。このハイドロゲル内で包括培養したヒト肝癌由来HepG2細胞はスフェロイドを形成したことから、基材との接着を抑制しつつ、細胞増殖に必要な栄養成分やタンパク質因子は通過するハイドロゲルの設計が可能であることを明らかにした。また、足場機材の機能化を目的として、増殖因子を接着可能なヘパリンが導入されたハイドロゲルを調製した。その際、ゼラチンとの組み合わせにより、細胞増殖挙動が変化することを明らかにすると共に、塩基性繊維芽細胞増殖因子の添加により細胞増殖が促進されることを確認した。 最後に、任意のペプチド・タンパク質成分を捕捉可能な部位として、SpyCatcher-SpyTagシステムとStreptavidin-biotin相互作用の異なる固定化機構を利用可能な融合タンパク質を設計し、これが導入された新規ハイドロゲルを設計した。蛍光ラベル化ペプチドならびに蛍光タンパク質をモデルとした系において、当該ハイドロゲル中にそれらの空間局在性を調節して固定化可能なことを確認した。また、次年度の検討に向け、国内研究者の協力を得て、コラーゲン微粒子の調製を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)異次元細胞集塊の同一反応場における形成 チオール基修飾ゼラチンとヘパリンを調製し、チオール基修飾4分岐型ポリエチレングリコール、グリシルチロシン、西洋わさび由来ペルオキシダーゼを無血清培地に溶解し、HepG2細胞懸濁液と混合、温置することでゲル内に安定にスフェロイドを形成する手順を確立した。また、ヘパリン導入ハイドロゲルへの増殖因子の導入がNIH3T3線維芽細胞シート形成に与える影響を評価したところ、増殖の促進は確認されたものの、通常基材を用いた既往の系ほどの効果を得るには至らなかった。そこでハイドロゲル形成時のゼラチンとヘパリンの混合状況を顕微鏡観察したところ、足場形成に際してミクロな凝集が観察され、チオール化ゼラチンとヘパリンそれぞれの溶液中の表面電荷を考慮する必要があることが明らかとなった。一方、スフェロイド形成においては、増殖時間と共にスフェロイド形成が促進されると共に死細胞の割合が増加したことから、既往の報告に従ってコラーゲン微粒子を共包括することを試み、HepG2細胞が特異的に示す活性の向上を確認した。 2)異種細胞増殖因子の捕捉が可能なハイドロゲルの設計 ペプチド-タンパク質間で特異的な共有結合を形成可能なシステムと、リガンド-タンパク質間に働く強力な非共有結合相互作用を同時に実現する新規組換え融合タンパク質を設計した。これにシステイン残基を部位特異的に導入することで、当該融合タンパク質をハイドロゲル中に固定化し、さらにペプチド成分とタンパク質成分のハイドロゲル内の空間的分布を蛍光顕微鏡で視覚化することで、捕捉に用いる固定化モード(共有結合あるいは非共有結合相互作用)により各成分の空間分布をある程度制御可能なことを明らかにした。 以上の成果より、研究開発は概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の成果を融合し、異次元細胞集塊からなる異種細胞複合構造の形成を試みる。シート状細胞構造体形成に対しては、最適なチオール化ゼラチンとヘパリンの組み合わせを精査する。現在、表面電荷の制御により、凝集化を抑制可能な条件を見出しており、これを用いた細胞増殖試験を実施する。スフェロイド形成に対しては、コラーゲン微粒子の効果的な導入を検討した後、同一ハイドロゲル基材を用いた異種細胞同時培養系を確立する。細胞シートの形成過程において、ゲル上に接着・伸展しながら形成する細胞シートの足場を適当なタイミングで崩壊することで、細胞の伸展状態からの回復過程を追跡する。一方、ハイドロゲル内部でのスフェロイド形成過程を追跡し、これらを時空間的に統合することによって得られる高次の細胞集塊の特性を評価し、3次元組織構造形成に対する新たな選択肢を提案することを最終目標とする。
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Causes of Carryover |
当該年度に実施すべき検討事項はほぼ達成できた。一方、新たに検討すべき課題も生じ、次年度の開始と共に着手することが妥当と判断したため。
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