2017 Fiscal Year Research-status Report
軟Ⅹ線発光における誘導放出抑制現象を利用した超高分解能顕微鏡の開発
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17K19021
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
江島 丈雄 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (80261478)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東口 武史 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80336289)
若山 俊隆 埼玉医科大学, 保健医療学部, 准教授 (90438862)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 軟X線顕微鏡 / 軟X線励起STED / シンチレーター / ベクトルビーム |
Outline of Annual Research Achievements |
軟X線励起によるシンチレーターの誘導放出抑制現象を用いることで、高い空間分解能を持つ軟X線顕微鏡によりⅩ線の波長に寄らず同じ空間分解能の値で水溶液中のnm構造とその構成元素の知見を得る、という研究目標に対して、本研究では研究課題として、(A)SX-STED顕微法に最適なシンチレーターの探索とそのDepletion比の評価、(B)アクロマティック波長板を用いたアジマス偏光素子の開発と評価、(C)計画A、Bに基づく超高分解能SX-STED顕微鏡の開発・評価、の3つを挙げ、課題を実行してきた。 本年度は主として、研究目標を達成するための基礎となるシンチレーターの探索とそのSTED光強度Iとシンチレーターの飽和発光強度Isの比を得るための装置開発と開発した装置を用いたシンチレーターの発光強度測定を行ってきた。その結果、新たにEu:CaF2、Tb:LSOなどの物質が水の窓波長領域で高い発光効率を示すことを見出した。6月のマシンタイムでは更に発光スペクトルの測定を行いSTEDに最適なシンチレーターを選択する。 また並行してベクトルビーム光学系の開発と波長可変のSTED用レーザーの開発を行った。ベクトルビームはHe-Neレーザーを用いた干渉光学系による評価によりベクトルビームが生成できていることが確認できた。また波長可変のSTED用レーザーについても順調に開発が進んでおり、今後、発振強度の高強度化を試みる予定である。今後、波長可変レーザーとベクトルビーム光学系を組み合わせて、光学顕微鏡に組み込む予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に示した実験課題(A)~(C)に基づき、29年度は主として(A)と(B)の研究課題を実行してきた。当初、シンチレーターの発光強度測定用に開発した装置は、既存のBL11Dビームラインに備え付けの反射率計の架台と干渉したため、設計をした。また設計変更に伴い、新たに光学設計ソフトを購入し、(A)、(B)、(C)の課題がそれぞれ行えるような光学系を設計しなおし、評価装置を作製した。作製した装置をPhoton Factory BL11D光学評価ビームラインに設置して、動作確認を行い、各種シンチレータの発光強度の軟X線波長依存性を測定した結果、全体に400eV以上のエネルギー域でフラットな発光強度を示し、その中でもEu系、Tb系シンチレーターの発光強度が強いことが明らかになった。課題(B)については回転対照型のフレネルロムを用いた偏光素子を用いてベクトルビーム光学系を作製し、干渉計測を行った結果、波長632.8nmでベクトルビームが発生していることが明らかとなった。課題(C)については、課題(B)の結果に基づき、光学設計ソフトを用いて所有する光学顕微鏡に適合するベクトルビーム光学系の設計を行った。その結果、課題(B)で開発した光学系では顕微鏡のビーム径とのマッチングが取れないことが明らかとなり、新たに大口径のフレネルロムとビームエクスパンダを開発した。開発した光学素子単体の波面精度はほぼλ/10を示した。引き続きベクトルビーム光学系に組み込み偏光性能をチェックする必要がある。 以上からシンチレーターの評価に遅れがあるものの、研究全体としては順調に推移していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
進捗状況において示した通り、シンチレーターの評価のための装置開発が終わりその動作確認ができたことから、開発した評価装置をPhoton Factory BL11Dに設置して、各種シンチレーターの発光強度の波長依存性等の評価を行う。当初の計画では予定していなかったが、軟X線励起の発光スペクトルの励起波長依存性を取得することで、発光効率の高い軟X線動作波長領域と誘導放出を起こすのに最適な可視光波長の2つの情報を得ることができるため、30年度6月のマシンタイムにおいてその実験を行う。 一方で、埼玉医科大で開発したベクトルビーム光学系および宇都宮大で開発したSTED用波長可変レーザーがそれぞれ稼働状態になったことから、30年度の前半はこれらの装置を組み合わせて波長可変のSTED顕微鏡として動作させる。30年度後半は、シンチレーター評価から得られたスペクトル情報に基づき、稼働させたSTED顕微鏡を用いてシンチレーターの可視領域での誘導放出実験を行う。これにより、シンチレーターの最適誘導放出波長が求まり、それに合わせた誘導放出光学系を組むことが可能となる。
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Causes of Carryover |
シンチレーター評価装置の仕様変更に伴い、29年度は主に光学設計を含む装置設計を主として行ったため、放射光施設を利用した実験が当初予定回数より減ったため。30年度は、完成した評価装置を用いて放射光施設での実験を29年度に行えなかった分も含めて行うため、残予算をその分の旅費に充当する。
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Research Products
(15 results)