2018 Fiscal Year Research-status Report
Synthesis of Apatite Nanocrystals Containing Chlorophyll Molecules for Simultaneously-Achievable Imaging and Treatment of Minute Epithelia Cancers
Project/Area Number |
17K19027
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
多賀谷 基博 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (20621593)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 薫明 北海道大学, 歯学研究院, 助教 (40374566)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | ナノバイオ材料化学 / 無機/有機ナノ複合体 / バイオセラミックス / 生体鉱化作用 / セラノスティクス粒子 / 水酸アパタイト / クロロフィル / 一重項酸素 |
Outline of Annual Research Achievements |
微小な超早期段階の悪性腫瘍を,蛍光内視鏡によって『安全・高感度に映し出して「その場で」治療できる材料』を創製できれば,がんの撲滅が実現する。これまでの材料候補では,イメージングにおいて低い生体安全性・発光効率・耐光性が問題であり,更には,治療との両立には至っていない。そこで,本研究では,生体安全性が高く微小がん部位を高精度に細胞スケールでイメージングして治療できるナノ結晶を創製する目的である。 当該年度 (西暦2018年度) においては,葉緑素 (Chl) 含有・水酸アパタイト (HAp) ナノ結晶表面への細胞結合分子の修飾方法を確立した。細胞結合分子として,がん細胞表面に超過剰発現する葉酸受容体を標的とした葉酸分子,及び,HER2受容体を標的としたHER2抗体を用いた。表面修飾技術は,既に申請者等は検討していたため円滑な開発が実現した。具体的に,液相反応により3-アミノプロピルシランをChl含有HApナノ結晶表面へ結合形成させ,最表面へアミノ基を露出させた。次いで,アミノ基と細胞結合分子内のカルボン酸の脱水縮合反応により,細胞結合分子をナノ結晶表面へ共有結合を介して形成させた。がん細胞へ特異的に結合・取込が効果的な修飾分子の密度 (分子専有面積) が分かった。同時に,特定の分子専有面積において,修飾分子が結晶表面に存在するChlと励起錯体を形成した光化学的挙動を示すことが分かった。つまり,ナノ結晶(光機能性部)と細胞結合部(表面修飾分子)の融合・協奏によってイメージング特性が改善できることを見出した。 以上より,当該年度の研究によって,がん細胞へ特異結合する『細胞結合分子』の修飾技術が実現した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当該年度 (西暦2018年度) において,当初の予定どおり,可視光域に励起/発光帯を有し生体に無害な天然色素『葉緑素 (Chl)』を含有した水酸アパタイト (HAp) ナノ結晶表面への細胞結合分子の修飾方法を確立した。特に,ナノ結晶内部(光機能性部)と細胞結合部(表面修飾分子)の協奏効果によってイメージング特性が飛躍的に向上させた結果は,予定以上の成果であり,申請者及び申請者の研究室学生が一丸となって研究へ邁進したことに由来する。同時に,研究の立上と推進が加速したためでもある。更に,研究実績の概要で述べたように,生体に類似な穏和な条件でHApと色素をハイブリッドさせた光機能ナノバイオセラミックスの創製に世界で初めて成功した点は,新規性と進歩性共に評価されている。 以上の成果は,ACS Applied Materials & Interfacesをはじめといた著名な雑誌へ掲載され,研究協力者である大学院生が2件受賞するなどの研究・教育業績に至っており,世界への成果発信について十分に達成したものと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
ナノバイオ材料分野において,細胞機能へ効果的に働きかける革新的セラノティクス粒子の開発が重要である。本研究では,水酸アパタイト (HAp) 結晶とChlのハイブリッド化を推進した。その結果,無機と有機の光機能界面形成に加えて,粒子内部(Chl)と外部(細胞結合性分子)の励起錯体の形成に伴う光機能を見出して,バイオイメージング特性を飛躍的に向上させることに成功した。これまで,診断のための光機能とターゲッティングのための分子機能は区別して考えられてきたが,本研究によって両機能が協奏・融合した。 今後,生体内での診断法の実証と「その場」治療技術への展開を実現する。すでに,予備実験を進めており,HeLaがん細胞に対しての特異標識特性と治療が実現している。次年度は,本ナノ結晶の「生体へ多量に投与できる安全性」と「がん細胞への選択的な取込特性」を見出し,蛍光内視鏡によって高感度に生体内・微小がん部位を検出する技術へ応用する。さらに,本ナノ結晶をがん細胞へ選択的に取込させた後に特定光照射によって,Chlの光増感に伴うラジカル酸素発生によってがん細胞のみを死滅する技術を確立する。 以上により,超早期の微小がん部位のイメージングと治療を両立するナノ結晶として実用する。そして,研究を進化・深化させ,ナノバイオニクス分野へ貢献し,日本の超少子高齢社会をより良く豊かにする信念の下に,本研究へ邁進する予定である。
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Causes of Carryover |
予算執行毎に安価な試薬や物品を慎重に選定して発注しており、予定していた額より少ない執行に終わった。そのため、次年度使用額が生じた。これによって、繰越された次年度使用額は有効に生体内・外での本研究で開発したナノ結晶の診断・治療の実証実験へ充てることができ、円滑に研究が進むと共に世界に先駆ける研究へ展開できる見通しである。
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Research Products
(22 results)