2017 Fiscal Year Research-status Report
同位体エンジニアリングが生みだすグラフェンの機能探索
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17K19037
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
有江 隆之 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80533017)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | グラフェン / 熱電変換 |
Outline of Annual Research Achievements |
グラフェンデバイスに様々な機能を付与するため、同位体によるヘテロ界面を利用し、同位体制御技術の新たな研究フェーズを開拓することが本研究の目的である。 今年度は計画に従い、同位体を用いたグラフェン周期構造を作製し、非対角熱電効果発現について検証を行った。具体的には、まず比較的非対角効果が大きく出ると考えられる12Cグラフェンと、12Cと13Cを混合させて合成したグラフェンのヘテロ構造を作製した。ここで、同位体界面を緻密に制御するためエッチング条件の最適化を行い、再現良く周期構造を作製することに成功した。幅5μmの周期構造に対して、まず電気特性、熱電特性を測定したところ、移動度とゼーベック係数はそれぞれ~1,000cm^2/Vsと~60μV/Kとなり、通常CVDで合成したグラフェンと遜色ない特性を示した。このことから、同位体元素の導入が電気的特性に影響を与えないことを改めて確認することができた。 次に、グラフェンデバイス面内に温度変化を与え、温度変化を与えた方向とは直交方向での電圧を測定したところ、ヘテロ界面の角度に応じて出力電圧が変化し、45°の界面角度で最大となった。一方、デバイスのアスペクト比を変化させたときの出力電圧は比例関係となった。このことから得られた出力電圧は、非対角熱電効果を反映した熱起電圧であることが分かった。グラフェンのような二次元材料においても、電気伝導率やゼーベック係数、熱伝導率に異方性をもたせることで、非対角熱電効果が発現することが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初検証課題であった、グラフェン同位体ヘテロ構造の非対角熱電効果について、熱起電圧の大きさ自体は満足のいくものではないが、界面角度依存性、アスペクト比依存性とも、理論で予測したものと同じ傾向を示した。今後の熱起電圧の向上のため構造の最適化が必要不可欠であるが、グラフェンのような二次元原子材料においても、面内の熱流を利用して非対角熱電効果が実験的に確認できたことは大きな収穫であり、概ね計画通りに進捗しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き非対角熱電効果によるグラフェンデバイスの起電圧向上に取り組む。トップダウン合成では、周期幅と界面数を最適化し、例えばフレキシブル基板上にデバイスを作製するなど、より実用的な応用を指向した実験を展開する。ボトムアップ合成では、原料ガスの切り替えにより光の波長程度の幅を有するヘテロ周期構造を作製し、スピンを利用した新たな機能発現を目指す。
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Causes of Carryover |
トップダウン合成において、酸素プラズマを用いて周期構造を作製することができた。界面構造は比較的乱雑だと考えられるが、結晶性の評価や緻密な界面構造を制御した作製手法の確立よりも、まず非対角熱電効果の実証を優先したため未使用額が生じた。性能の向上には結晶性評価と界面制御は必要不可欠であり、未使用額はその経費に充てる。
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