2017 Fiscal Year Research-status Report
かぎりなくタンパク質に優しい高速原子間力顕微鏡の開発
Project/Area Number |
17K19042
|
Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
山本 大輔 福岡大学, 理学部, 准教授 (80377902)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武藤 梨沙 福岡大学, 理学部, 助教 (10622417)
|
Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
|
Keywords | 走査プローブ顕微鏡 / ナノバイオ / 蛋白質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、探針から試料に与える擾乱を限りなく低減させることのできる新規な高速原子間力顕微鏡(高速AFM)測定モードを開発する。本年度は、本手法でAFMのフィードバックに用いるカンチレバー信号が探針と試料との相互作用によってどのように変化するか、その特性ならびにタンパク質の柔らかさや探針の先端曲率半径など種々の測定パラメーターにどのように依存するかをシミュレーションにより見積もった。その結果、本手法で検出するカンチレバーの応答信号特性は、カンチレバーのばね定数と測定試料の硬さに大きく依存し、その一方で探針の先端半径はさほど影響しないことがわかった。また、観察対象が通常のタンパク質分子程度の柔らかさであれば信号の変化を検出可能であり、かつ通常の高速AFM測定法と比較して、探針とタンパク質試料との間に働く力を低減できると見積もられた。 本手法を実現するための信号検出システムを構築して高速AFM装置へ組み込んだ。この装置を用いてマイカ表面の測定を試み、その観察に成功した。これにより、本手法による画像取得が可能であることを実証することができた。一方、本手法で検出するカンチレバーの応答信号の値が当初想定していたよりも小さく、また高速AFMのフィードバックがやや不安定であったため、硬いマイカ基板に対しても測定することが容易ではなかった。これらの結果から、信号検出システムを含め、高速AFM装置構成の一部をみなおす必要があることがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カンチレバーの応答信号特性をシミュレーションにより見積り、種々の測定パラメーター依存性を明らかにすることができた。また、カンチレバー信号検出システムを構築しマイカ表面を測定することで、本手法による画像取得が可能であることを実証することができたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究で明らかになった、本手法における高速AFMフィードバックの安定性に関する課題を解決するために、信号検出システムならびに既存の高速AFM装置の構成を再検討する。これまでの研究により本手法による画像取得が可能であることを実証したため、システムの再構築と測定を繰り返すことで装置上の問題点を具体的に抽出し、フィードバックの安定性を向上させる。 次に、実際のカンチレバーの応答信号特性を測定する。硬いマイカ基板から柔らかい生体試料を測定対象とすることで、測定時における信号の応答が試料の硬さにどれほど依存するか明らかにする。その結果と既にシミュレーションにより得られているカンチレバーの応答信号特性とを比較し、シミュレーションにより得られた探針と試料との間に働く力の値が妥当であるか検証を行う。本手法で検出するカンチレバー信号が当初の想定よりも微弱であったため、応答信号特性をより高い精度で測定するためのシステムを新たに構築する。同時に、タンパク質など生体試料の測定を行い、従来の高速AFMでは測定が困難である非常に脆弱なタンパク質に対しても本手法が有効であるか検証を行う。
|
Causes of Carryover |
今年度に配分された金額は効率よく使用できた。新規な高速AFMシステムを立ち上げたが、システムを最適化する条件の決定は年度をまたがる可能性が高く、次年度に有効に研究費を使用するために未使用額が生じた。次年度に繰り越し、高速AFMシステムを最適化するための消耗品として使用する。
|