2018 Fiscal Year Annual Research Report
Spin current and superconductivity in beta-tungsten
Project/Area Number |
17K19049
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
林 将光 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (70517854)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 超伝導 / タングステン / スピン軌道相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、スピン軌道相互作用が大きいベータ-タングステン(W)の超伝導特性を調べた。ベータ-タングステン(W)をスパッタ法で成膜すると、5nm程度の膜厚以上で結晶化し、ベータ(A15)構造からアルファ(BCC)構造に構造相転移が起きる。アルファ-タングステンの超伝導転移温度は非常に小さいことが報告されており(10mK程度)、超伝導を観測するにはベータ-タングステンが必要となる。しかしながら、薄膜の超伝導は膜厚の低下とともに超伝導転移温度が減少することが知られており、膜厚が薄い試料の測定は困難である。そこで本年度は、極低温の測定系を用いてスパッタ法で成膜した厚さ3 nm程度のベータ-タングステン薄膜の超伝導特性を評価した。その結果、約2 Kで試料が超伝導転移したことを観測した。また、超伝導状態が維持できなくなる臨界磁場(Hc)を測定した結果、磁場を膜面水平方向に印加した時の値が非常に大きいことがわかった。これは過去の報告と概ね一致する結果である。面内臨界磁場と測定温度の関係を調べたところ、2次元系の超伝導特性と一致する結果が得られ、膜厚が3 nm程度の超伝導体の性質を捉えた結果と考える。また、面直方向の臨界磁場の値から超伝導のコヒーレンス長が7-14 nm程度であることがわかった。今後はベータ-タングステンや昨年度調査したW/MoN多層膜を用いて、スピン軌道相互作用が大きい超伝導物質へのスピン流注入やスピン流生成に関する実験を行う。
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Research Products
(1 results)