2017 Fiscal Year Research-status Report
ミクロの原子/分子スイッチとマクロの電気伝導を繋ぐ原子スケールエレクトロニクス
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17K19052
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
山崎 詩郎 東京工業大学, 理学院, 助教 (70456200)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 走査トンネル顕微鏡 / 原子間力顕微鏡 / 走査トンネル電位計 / 原子スイッチ / 電気伝導 / 分子 / 表面 |
Outline of Annual Research Achievements |
走査トンネル顕微鏡は、原子分解能像を得るのみならず、原子を一つ一つ動かす原子操作や原子スイッチが可能である。一方で、原子間力顕微鏡(AFM)により、単一分子の分子骨格が画像化されるなど進展が著しい。研究代表者は、4つのSi原子が傾いて結合したSi4原子スイッチを作製し、世界で初めてSTMのトンネル電流とAFMの化学結合力の両方で同時に原子スイッチさせることに成功した [論文Nano Letters]。他方で、走査トンネルポテンシオメトリー(STP)は試料にマクロな電流を流しながらナノスケールで電気伝導をマッピングできる手法である。本研究計画ではその方向性を組みなおし、Si4原子スイッチ同士や分子と連動させて、それらの電子状態をSTMで結合状態をAFMで、さらに電気伝導状態をSTPで可視化することを目指した。 装置の立ち上げに関して、共同研究によりOmicron社製低温4探針STMの再立ち上げの準備を行った。また、STPに関連して、東大との共同研究により、電気伝導を測定するUNISOKU社製低温4端子を獲得し、2017年5月に現所属へ搬入した。研究内容に関して、研究の基盤となるSi4単体のAFMによる原子スイッチの研究、および双子Si4-Si4原子スイッチの研究を国際学会含む8回の学会発表(ACSIN2016, ICSPM, NC-AFM2017, ISSS8、他)や招待講演(横浜国立大学、上海交通大学)で発表した。また、本研究計画の準備にもつながる、STPの試験で用いるAg(111)超薄膜上に関する研究が広がった。Ag(111)超薄膜上での量子井戸状態と鏡像準位状態との相互作用を観測した[論文PRB]。また、r3-B/Si(111)表面超構造とAg(111)超薄膜との界面に3x3超周期が存在することをSPring-8のX線構造回折により確かめた[論文JJAP]。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【装置改造3:4探針STMの立ち上げと4探針STP化】奈良先端大との共同研究により、Omicron社製低温4探針STMを獲得した。現地調査により、大気中でのプローバーとしての動作、超高真空中でのSTMとしての動作、超高真空中での高分解走査型電子顕微鏡の動作の3段階で再起動を進める計画を立て、問題なく立ち上げられるめどが立ったことを業者と確認した。一方で、30W以上の電源、冷却水循環装置、圧縮空気等のインフラ不足していることを業者と確認した。装置は現地での立ち上げと調節後にH31年度4月を目標に現所属への搬入手続きを進めている。また、東大との共同研究により、UNISOKU社製低温4端子を獲得し、5月に現所属へ搬入した。主要な装置は揃っているが、準備室が不足している状態である。 【計画1-1:連動する双子Si4-Si4原子スイッチをAFMの力で原子スイッチする】基礎となっているSi4単体のAFMによる原子スイッチの研究、および双子Si4-Si4原子スイッチの研究を国際学会含む8回の学会発表(表面科学学術講演会、日本応用物理学会、ACSIN2016, ICSPM, NC-AFM2017, ISSS8、他)や招待講演(横浜国立大学、上海交通大学)で発表した。 【装置改造2:電気伝導測定のためのSTP多探針化の試験で用いるAg(111)超薄膜の研究】Ag超薄膜上での量子井戸状態と鏡像準位状態との相互作用を観測した[論文PRB]。また、r3-B/Si(111)表面超構造とAg(111)超薄膜との界面に3x3超周期が存在することをSPring-8のX線構造回折により確かめた[論文JJAP]。超薄膜、および電気電導度の研究に関連して、In単原子層の新たな超構造を発見した[学会発表]。また、ドーパント量による金属絶縁体転移温度の操作をLEEDにより行った[国際学会発表]。
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Strategy for Future Research Activity |
【装置改造1:力と分子骨格計測のためのAFM化】若手研究(A)によりUNISOKU社製低温STMの導入を進めた。本研究課題の力スイッチと分子骨格計測を行うためにはAFMセンサーの加振とその検出のために2つの電極を追加し、探針と試料を上下逆にするのがポイントである。この改造を行ったユニソク社製改造AFMユニットを導入する。 【装置改造2:電気伝導測定のためのSTP多探針化】本研究課題の電気伝導測定をSTPで行うためには、電流導入のための電極2つとそれを表面一原子層に届けるためのプローブが必要である。その改造を行ったユニソク社製改造AFM/STPユニットを導入する。 【装置改造3:4探針STMの立ち上げと4探針STP化】基盤研究(B)の補助、および奈良先端大との共同研究により、Omicron社製低温4探針STMの搬入準備を進めている。4探針STMヘッドやSEMのメンテナンスや交換を行い、まずは4探針STMとして再稼働させる。続いて、4探針AFMおよび4探針STPへ改造し、原子構造と電気伝導の原子スケール可視化が可能となる。 【計画1-1:連動する双子Si4-Si4原子スイッチをAFMの力で原子スイッチする】Si(111)-7x7表面に0.2ML程度のSi原子を室温で蒸着して、相互作用するSi4原子スイッチを作成する。Si4原子スイッチの4つの原子のうち、OnまたはOff状態にあるSi原子上に探針を移動し、力の距離依存性(フォースカーブ)を測定する。その急峻な変化点から力スイッチに必要な力がそれぞれ何nNの引力なのかを求める。それを単体のSi4原子スイッチの場合の約1.5nNと比較し、相互作用が力スイッチに与えた影響を知る。次年度からは、PTCDA分子を蒸着し、Si4原子スイッチとの連動や、分子単独でのスイッチを狙う。
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Causes of Carryover |
若手研究(A)および東北大学との共同研究で立ち上げていた、UNISOKU社製低温STMにAFMとSTPの機能を組みこみ、STMによる電子状態とAFMによる原子構造とSTPによる電気伝導を原子/分子スイッチ上で観測する計画であった。しかしながら、想定外にも、Omicron社製の低温4探針STMを獲得することが決まった。STPの機能を組み込むのであれば後者の方が能力的に高いが、一方で装置の再立上の難易度も高い。そのため、計画の再検討に時間を要し、次年度の競争的資金の獲得状況もその計画に大きな影響を及ぼすため、その結果が出る今年度までは判断を待った。結果として、基盤研究(B)によりOmicron社製の低温4探針STMを十分立ち上げてAFMやSTPに改造できるめどが立ったその結果、時期は遅れたが、本研究計画の予算は当初の計画通りにUNISOKU社製低温STMのAFMとSTPへの立ち上げに用いることとなった。
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Research Products
(36 results)