2021 Fiscal Year Research-status Report
ミクロの原子/分子スイッチとマクロの電気伝導を繋ぐ原子スケールエレクトロニクス
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17K19052
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
山崎 詩郎 東京工業大学, 理学院, 助教 (70456200)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2023-03-31
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Keywords | 走査トンネル顕微鏡 / 原子間力顕微鏡 / 走査トンネル電位計 / 原子スイッチ / 電気伝導 / 分子 / 表面 |
Outline of Annual Research Achievements |
走査トンネル顕微鏡(STM)は、原子分解能像を得るのみならず、原子を一つ一つ動かす原子操作や原子スイッチが可能である。一方で、原子間力顕微鏡(AFM)により、単一分子の分子骨格が画像化されるなど進展が著しい。研究代表者は、4つのSi原子が傾いて結合したSi4原子スイッチを作製し、世界で初めてSTMのトンネル電流とAFMの化学結合力の両方で同時に原子スイッチさせることに成功した [論文Nano Letters]。本研究計画では、Si4原子スイッチ同士や分子と連動させて、それらの電子状態をSTMで結合状態をAFMで、さらに電気伝導状態をSTPで可視化することを最終目標とした。 【装置改造1:力と分子骨格計測のためのAFM化】装置全体を超高真空状態にする重要なステップをクリアし、コントローラーをはじめとするすべての電極の接続を確認した。まずは室温において超高真空中でナノスケールの像を得ることに成功した。加熱によりSi基板を清浄化し、7x7表面の形成を確認するRHEEDの設置を完了させた。これにより、室温でのSTMの立ち上げが完了し、本研究計画に必要な80Kでの低温測定およびAFM化への下地が全て整った。 【計画1-1:連動する双子Si4-Si4原子スイッチをAFMの力で原子スイッチする】研究の基盤となるSi4単体のAFMによる原子スイッチの研究成果が、日本物理学会誌にされた。その過程で、双子Si4-Si4原子スイッチの研究に関する解析と考察を最終段階まで進め、論文の執筆が進んでいる。絶縁体であるTiO2基板上のSrTiO3-r13xr13表面においてSTMの電流誘起の新しい原子スイッチを発見た。これは絶縁体上としては稀な原子スイッチと言え、国際学会2件を含む学会3件で発表され[ICSPM29,日本表面真空学会,ALC'21]、国際学会において発表賞を受賞した[受賞ALC'21]。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【装置改造1:力と分子骨格計測のためのAFM化】装置全体を超高真空状態にする重要なステップをクリアし、コントローラーをはじめとするすべての電極の接続を確認した。まずは室温において超高真空中でナノスケールの像を得ることに成功した。加熱によりSi基板を清浄化し、7x7表面の形成を確認するRHEEDの設置を完了させた。これにより、室温でのSTMの立ち上げが完了し、本研究計画に必要な80Kでの低温測定およびAFM化への下地が全て整った。 【計画1-1:連動する双子Si4-Si4原子スイッチをAFMの力で原子スイッチする】研究の基盤となるSi4単体のAFMによる原子スイッチの研究成果が、日本物理学会誌に掲載された。その過程で、双子Si4-Si4原子スイッチの研究に関する解析と考察を最終段階まで進め、論文の執筆が進んでいる。また、本研究計画に関係する共同研究が予想以上に広がった。絶縁体であるTiO2基板上のSrTiO3-r13xr13表面においてSTMの電流誘起の新しい原子スイッチを発見た。これは絶縁体上としては稀な原子スイッチと言え、国際学会2件を含む学会3件で発表され[ICSPM29,日本表面真空学会,ALC'21]、国際学会において発表賞を受賞した[受賞ALC'21]。 【装置改造2:電気伝導測定のためのSTP多探針化の試験で用いるVO2超薄膜の研究】本研究計画に関係する共同研究が予想以上に広がった。TiO2ステップ基板によりVO2薄膜の電気伝導における金属絶縁体転移温度を操作した研究が行われた。国際学会3件を含む学会4件で発表され[IVC-22,応用物理学会,IWOX-XIII,SANKEN]、応用物理学の速報誌[論文Applied Physics Express]に速やかに受理された。これはまさにミクロとマクロを繋ぐ本研究計画の最終目標と同じ方向性であり、下地が整ったといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
【装置改造1:力と分子骨格計測のためのAFM化】若手研究(A)によりUNISOKU社製低温STMの導入が完了した。本研究課題の力スイッチと分子骨格計測を行うためにはAFMセンサーの加振とその検出のために2つの電極を追加し、探針と試料を上下逆にするのがポイントである。この改造を行ったUNISOKU社製改造AFMユニットを導入する。 【装置改造2:電気伝導測定のためのSTP多探針化】本研究課題の電気伝導測定をSTPで行うためには、電流導入のための電極2つとそれを表面一原子層に届けるためのプローブが必要である。その改造を行ったUNISOKU社製改造AFM/STPユニットを導入する。 【装置改造3:4探針STMの立ち上げと4探針STP化】基盤研究(B)の補助、および奈良先端大との共同研究により、Omicron社製低温4探針STMの搬入が完了した。4探針STMヘッドやSEMのメンテナンスや交換を行い、まずは4探針STMとして再稼働させる。続いて、4探針AFMおよび4探針STPへ改造し、原子構造と電気伝導の原子スケール可視化を行う。 【計画1-1:連動する双子Si4-Si4原子スイッチをAFMの力で原子スイッチする】Si(111)-7x7表面に0.2ML程度のSi原子を室温で蒸着して、相互作用するSi4原子スイッチを作成する。Si4原子スイッチの4つの原子のうち、OnまたはOff状態にあるSi原子上に探針を移動し、力の距離依存性(フォースカーブ)を測定する。その急峻な変化点から力スイッチに必要な力がそれぞれ何nNの引力なのかを求める。それを単体のSi4原子スイッチの場合の約1.5nNと比較し、相互作用が力スイッチに与えた影響を知る。次年度からは、PTCDA分子を蒸着し、Si4原子スイッチとの連動や、分子単独でのスイッチを狙う。
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Causes of Carryover |
当初は、若手研究(A)および東北大学との共同研究で立ち上げていた、UNISOKU社製低温STMにAFMとSTPの機能を組みこみ、原子/分子スイッチ上でSTMによる電子状態とAFMによる原子構造とSTPによる電気伝導を観測する計画であった。しかしながら、想定外にも、基盤研究(B)および奈良先端大学との共同研究により、より本研究計画の遂行に適しているOmicron社製の低温4探針STMを獲得することが決まった。そこで、本研究計画で重要な役割を果たすSTPの機能を、その能力をより発揮することのできる後者に組み込む計画にアップグレードした。しかしながら、まずは基盤研究(B)により装置の基幹部分の立ち上げなければ、本研究計画によるSTPの導入の詳細な計画を立てることはできない。そのため、本研究計画の経費は少し遅らせてから慎重に使用したほうが良いと判断した。 さらに、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、非常に複雑な装置である低温4探針STMを集中的に立ち上げることが困難となり、さらに慎重な使用計画を立てることとした。
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Research Products
(8 results)