2017 Fiscal Year Research-status Report
Spin state evaluation of electrons field-emitted from graphene edges and development of a novel spin polarized electron source
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17K19053
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
齋藤 弥八 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (90144203)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永井 滋一 三重大学, 工学研究科, 助教 (40577970)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | グラフェン / 電界放出 / 電子スピン / エッジ状態 |
Outline of Annual Research Achievements |
グラフェンの端では,電子間の相互作用により電子スピンが規則化することが予測されている。グラフェン端から電界放出した電子のスピン偏極を直接測定することによりスピン状態を解明し,炭素ベースの新規なスピン偏極電子源の可能性の検討が本研究の目的である。今年度の研究実績は以下の通りである。 1.電界放出顕微鏡によるグラフェン端からの電子放出:高配向熱分解グラファイト(HOPG)からの剥離により作製したグラフェンエミッタを用いて,電界放出顕微鏡(FEM)により,グラフェン端に特有のFEM像(lip パターン)を観察し,このパターンがグラフェンの端状態の局所状態密度の空間分布を反映することを,理論計算との比較により,示した。 2.グラフェンエミッタのスピン偏極度の測定:電界放出電子スピン偏極度測定装置を用いて,グラフェン端からのトンネル電子の室温におけるスピン偏極度を測定した。電界放出電子のスピン偏極度は電子放出サイトに敏感であり,電子放出サイトの中央部における偏極度20%に対して,端部では5%程度まで低下した。電界強度に対する偏極度を測定した結果,全放出電流10nAで最大50%が得られたが,印加電界の増加に伴って急激に減少することが明らかになった。スピン偏極度の経時変化を観察した結果,突発的な偏極度の増減が観測されたが,これはエミッタへの残留ガス(主に水素)の吸着脱離に起因すると推測される。 3.電界イオン顕微鏡機能の追加:グラフェンエミッタの先端構造を原子分解能で観察するためにネオンを結像ガスとする電界イオン顕微鏡(FIM)の機能を既存のFEM装置に追加した。これにより,互いに相補的なFEM像とFIM像を同一のグラフェンエミッタから得られる。次年度,これを用いて,グラフェン端の電子状態と原子構造との対応を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
グラフェン端に特有のFEM像であるlip パターンがグラフェンの端状態における局所状態密度の空間分布を反映するという,これまでの我々の仮説を,理論計算との比較により,裏付けることができた。グラフェン端の構造を原子分解能で観察が期待できる電界イオン顕微鏡(FIM)の機能を追加する事ができたことは,次年度に計画しているFEMとFIMの互いに相補的な顕微鏡法を使って,グラフェン端の電子状態と原子構造の対応の詳細を研究できる準備ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に沿い,まず,FIMの機能を追加したFEM/FIM両用装置を用いてlipパターンを示すグラフェン端の構造を調査し,エッジのタイプとスピン偏極度との間の関係を明らかにすることを目指す。次に,FEM/FIM装置へ水素,酸素などのガスを導入することにより,グラフェン端を化学修飾し,in-situで電子放出特性への影響およびスピン偏極度の変化を調べる。これにより,エッジの化学状態による磁性の変化を系統的に明らかにする。さらに,金属を用いない炭素ベースの新規なスピン偏極電子源としての特徴を明らかにする。
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Causes of Carryover |
次年度に繰越される次年度使用額(B-A)は少額であり,当初の使用計画に大きな変更はない。
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