2017 Fiscal Year Research-status Report
超省電力デバイスに向けた新奇窒化物スキルミオンの創成
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17K19054
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
浅野 秀文 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (50262853)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
羽尻 哲也 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (80727272)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | スキルミオン / 窒化物薄膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
スキルミオンは、100 nmのスケールで閉じた渦状の磁気構造であり、スキルミオンの有無の制御の容易さ・低電流駆動という特徴を持つため、次世代スピンメモリー材料として注目されている。本研究では、材料設計自由度の高い窒化物系を対象として、①新規窒化物スキルミオンの創成、②優れた物理特性を生かした新規スピンデバイスの実現を目的としている。 本期間中は、Co2Mo3合金ターゲットを用いた反応性マグネトロンスパッタ法によるCo2Mo3N薄膜の作製とその電気磁気特性の評価を行った。格子ミスマッチの観点より、サファイヤAl2O3のR面、およびC面基板を用いて、基板温度と窒素分圧を作製パラメータとして、エピタキシャル成長条件を探索し、以下の結果を得た。 1.R面上ではエピタキシャル成長せず、C面では(220)成長および(221)成長を観測した。さらに、基板温度と窒素分圧を最適化することにより、(221)方向に単一成長したエピタキシャル薄膜作製に成功した。 2.磁気特性の測定により、室温から77Kの範囲では、強磁性的なヒステリシス曲線は観測されず、磁場に対して直線的な磁化の挙動が観測され、常磁性、あるいは反強磁性的な磁気特性を持つことが分かった。バルクの先行研究との対比から、反強磁性的な磁気特性を有していると推察される。 3.電気的特性評価の結果、温度依存性が小さいものの、金属的な比抵抗を有することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
反応性マグネトロンスパッタ法によるCo2Mo3N薄膜の作製において、格子整合基板の選択、基板温度と窒素分圧の最適化により、エピタキシャル成長技術をほぼ確立したので、当初の第一目標は達成したと考えている。一方で、Co2Mo3Nという単一組成のみの薄膜作製に留まっているので、バルクの先行研究で報告されている、電気磁気特性の組成依存性については、今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果を踏まえ、確立したCo2Mo3Nエピタキシャル薄膜技術をベースとして、組成を系統的に制御した窒化物薄膜を作製し、薄膜組成が電気磁気特性に及ぼす影響を解明する。具体的には、バルクの先行研究で、スキルミオンの挙動が観測されている(Fe-M)Mo3N系(M=Pd, Pt, Rh等)に対して、本薄膜技術を適用して、(Fe-M)Mo3N系エピタキシャル薄膜の作製を行い、添加元素M(M=Pd, Pt, Rh)がエピタキシャル薄膜の電気磁気特性に及ぼす効果を明らかにする。これらの実験結果を総合して、Mo窒化物系薄膜におけるスキルミオンの挙動を解明し、新奇窒化物スキルミオンのデバイス化への指針を得る。
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Causes of Carryover |
予定していた消耗品の購入を次年度に繰り越したため。
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