2017 Fiscal Year Research-status Report
非線形ラマン原子間力顕微鏡による超解像イメージング
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17K19063
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
橋本 守 北海道大学, 情報科学研究科, 教授 (70237949)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 超解像イメージング / 非線形ラマン散乱 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,非線形ラマン散乱を用いて特定の分子振動を励起し,この分子振動励起に伴う体積膨張をAFMで観測することにより,安定してイメージングが行なうことが可能な超解像非線形ラマン散乱顕微鏡を実現することを目指している.この実現には,光学顕微鏡上に設置するAFMの開発,超短パルスレーザーの制御が重要な課題となる. 本研究費にて購入した,市販の原子間力顕微鏡キットを光学顕微鏡の試料ステージ上にxyz-PZTステージ設置し,さらにこの上にAFMを設置したシステムを構築した.現在,AFMとしての動作確認を行っている. AFMのカンチレバーは共振周波数を持っており,この共振周波数で微小な力を加えると容易に振動する.したがって,カンチレバーの共振周波数に合わせて分子振動励起を変調し,カンチレバーの振幅を増大させることで,高感度に体積膨張を検出する.しかしながら,レーザー光をカンチレバーあるいはその探針付近に照射するため,それらがレーザー光を吸収・膨張することで,分子振動による信号が妨害される恐れがある.そこで,非線形ラマン散乱の非線形性を利用した2重変調法を検討した. レーザー光のパルス発振周波数を僅かに代え,カンチレバーの共振周波数と同期させると,分子振動は同時照射の時のみ非線形光学過程で励起されるので,試料の膨張はカンチレバーの共振周波数で引き起こされる.これを実現するためには,パスルの発振周波数差を自由に調整できるようにしなければならない.そこで,約80 MHzでパルス発振しているレーザー光を8分周して約10MHzの電気パルスを作成し,これと基準信号としてファンクションゲネレーターでレーザー発振とは異なる周波数のパルス信号を作成し,これともう一台のレーザーを同期させるシステムを構築した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者は,2016年10月に大阪大学から北海道大学へ異動し,それに伴い2016年12月に実験装置(レーザー光源等)も移設した.本研究で使用を予定していた,同期型波長可変ピコ秒レーザーは,市販のレーザーに手を加えていたため移設を請け負って頂けずレーザー自身の調整を自ら行わなければならなかった.また,移設では全ての光学部品を一度光学定盤から外し,再度全ての光学部品を調整しながら設置せねばならず,これらの作業を経験のない学部学生と共に行う必要があり,時間を費やした.
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Strategy for Future Research Activity |
現在行っているパルス間隔変調は,レーザーのパルス発振周波数がカンチレバーの共振周波数に比べて非常に高いため,レーザー光がカンチレバーへ与える影響の低減が期待できるが,レーザーパルスが重なるのは,1/差周波数毎となるため得られる信号が小さいと考えられる.そこで,2台のレーザーの発振を同期させ,常に同時に照射する状態にしておくが,EOMなどで2台のレーザー光を異なる周波数で強度変調し,その差周波数をカンチレバーの共振周波数へ一致させるパルス強度二重変調法の使用が考えられる.この場合,常に2台のレーザーパルスは同時に試料へ照射されるため,その信号は,パルス間隔変調に比べ大きいことが予想される.ただし,カンチレバーの共振周波数に対してレーザーの強度変調周波数がそれほど分離されていないため,レーザー光がカンチレバーへ与える影響が大きいと考えられる.いずれの手法がSN比を最大化できるか実験的に確かめ,分子振動励起に伴う体積膨張をAFMで観測を実現する.
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Causes of Carryover |
既存のxyzステージと組み合わせてAFMを構築できることが判明し,これを使用することとしたためAFMの購入費用が低減された.カンチレバーが,想定より高額で(1本約1万円)あり,また,2種類のカンチレバーがあるtめ,どちらのカンチレバーが感度が良いか購入して比較する.また,想定とは異なって学生を研究に参画するうことができなかったので,旅費の使用が少なかった.次年度は学生を研究に参画させ,研究代表者共々積極に学会発表を行い研究成果を発信する.
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