2017 Fiscal Year Research-status Report
Oscillation deathによる気柱振動抑制技術の開発
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17K19064
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
琵琶 哲志 東北大学, 工学研究科, 教授 (50314034)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 熱工学 / 燃焼振動 / 結合振動子 / 熱音響現象 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,oscillation death(OD)を利用した熱音響自励振動の抑制手の確立である.ODは,互いに結合された自励振動子間の相互作用が引き起こす現象であり,振動の完全な停止(振動死現象)を意味する.燃焼ダクトをもつ機器では,熱的に誘起される気柱の自励振動である熱音響自励振動がしばしば生じる.この現象は機器の正常な運転を阻害するために,抑制方法の確立が望まれている.本研究の目的はODを利用して,できるだけ簡単な方法で熱音響自励振動を停止する方法を確立することである. 平成29年度の研究では,燃焼系の自励振動を発生する装置の作成および,時間遅れフィードバックによるODの実証を行なった.内直径が40 mmで,長さが1.5 mの両端を大気開放したステンレス製の気柱管と,都市ガス配管と接続した小型のブンゼンバーナーからなる実験系を作成した.適当なガス供給量と空気供給量のもとでは,ブンゼンバーナーをある程度気柱管内に挿入すると熱音響自励振動が発生することを確認した.その発生条件を明らかにし,とくに気柱管端からのバーナー先端位置を変えながら,自励振動の音響振幅と周波数を求めた. とくに強い振動が発生する条件に対して,中空のチューブを気柱管側壁に接続することで時間遅れフィードバックを作用させ,振動停止を試みた.チューブ長さを音速で割って求められる遅れ時間が自励振動周期の半周期程度であるときに強い抑制作用が観測された.さらにチューブ径と長さを調整することで比較的広いバーナー位置の場合に単一のチューブで振動抑制可能なことを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の研究は,燃焼系の自励振動を発生する装置の作成から始めた.燃焼系の自励振動は多様な系で観測されているが,典型例であるレイケ管型の燃焼振動に注目した.レイケ管型の燃焼振動系は両端を大気に開放した気柱管と,その内部に挿入するブンゼンバーナーで構成される.市販の都市ガス用ブンゼンバーナーの一部を改良したバーナーを作成し,いろいろなサイズの気柱で試したところ,燃焼振動が起こりやすいガス供給量,空気供給量とバーナー挿入位置(軸座標位置)の組み合わせがあることを確認した.その上でもっとも強い燃焼振動が発生した内直径が40 mmで長さが1.5 mの気柱管について詳細な実験を行い,音響振動振幅と周波数のバーナー先端の軸座標位置に対する依存性を明らかにした.軸座標位置によっては複数の振動モードが発生したが,多くの場合は気柱管の基本モードの振動であった.そのあとで,時間遅れフィードバックを作用させるために,適当な長さと内径の中空のチューブを気柱管のおおよそ中間位置に接続し,チューブ他端を同じ軸座標位置に接続した.この位置では音圧の腹になるためフィードバックの作用がもっとも大きくなる.実験の結果,チューブ長さを音速で割って求められる遅れ時間が自励振動周期の半周期程度であるときに強い抑制作用が観測された.さらにチューブ径と長さを調整することで比較的広いバーナー位置の場合に単一のチューブで振動抑制可能なことを明らかにした.これまでの実験結果から,内径6 mmのチューブでも十分な抑制効果があることがわかった.このときチューブ断面積は気柱管断面積の2.3%にすぎない.これほどのチューブで抑制できるなら現実の燃焼系に接続するときの物理的制約も小さいと期待される.以上のことから,順調な成果が得られていると判断している.
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Strategy for Future Research Activity |
レイケ管型の燃焼振動系を2つ用意し,互いに中空のチューブで結合し,相互作用させることを計画している.両者に周波数差がないときとあるときの比較を行い,時間遅れフィードバックと時間遅れ結合の振動停止に対する類似点,相違点を検討する. 燃焼振動を発生しやすい燃焼方式として空気と燃焼をあらかじめ混合しておいてから燃焼させる予混合燃焼方式がある.この場合,火炎面における圧力揺らぎが燃料と空気を予混合する区間を伝搬するときの時間遅れが燃焼発生の原因となっていることが指摘されている.そこで,この予混合距離を可変とする実験装置(バーナー部分と共鳴管)を作成し,この系に対しても自己フィードバックによる燃焼振動抑制を試みる.
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Causes of Carryover |
2月に発注した工作物の納品が4月に遅れたため.
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Research Products
(1 results)