2018 Fiscal Year Research-status Report
構造化シンチレータによる高エネルギー用高空間分解能・高感度画像検出器の開発
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17K19066
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
矢代 航 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (10401233)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉川 彰 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (50292264)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | X線 / イメージング / シンチレータ / 高アスペクト比 / 微細加工 / 高エネルギー / 高空間分解能 / GAGG |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、高エネルギーX線(主に100~400 keV)による1μmより高い空間分解能の高感度イメージングを実現するための構造化シンチレータの開発を目的とした。微細加工によってシンチレータを高アスペクト比化することで(「構造化シンチレータ」化することで)、感度を犠牲にすることなく、空間分解能を向上させることができる。特に、研究分担者である吉川彰教授(東北大学金属材料研究所)が最近開発した、高感度、高速応答シンチレータであるGAGGの微細加工による構造化を目指してきた。 平成30年度までに、構造化シンチレータを実現するための三つの方法、すなわち①アルゴンミリングによるミリングを行う方法、②結晶方位によるエッチングレートの違いを利用した異方性エッチング法、③鋳型を作製して融解したGAGGを流し込むキャスティング法について、実現可能性を検証するための基礎実験を行った。平成29年度に、フォトレジストをマスクとする①の方法を試みたが、GAGGのエッチングレートが遅く、かなり長時間のミリングが必要であることが明らかになった。平成30年度は、②、③のための基礎実験を続けた。②については、ワゴンホイール型のマスクパターンを表面に作製し、様々な溶液でエッチングレートの異方性を調べたが、異方性エッチングを実現するための有力な溶液をみつけることができなかった。③については、SiC鋳型の高アスペクト比化を進めた。 さらに平成30年度は、構造化シンチレータにおいて必要な、可視光を導波するための反射層(銀薄膜)の形成や、構造をわずかに変えることにより様々な波長の可視光を生じるペロブスカイト量子ドットシンチレータとの組み合わせによる多色シンチレータ、さらにGAGGを粉砕して、遠心分離機で鋳型の溝を充填する方法などについて、上記の基礎実験と並行して実現可能性を検証し、将来性について見極めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
GAGGに対する微細加工は、先行研究がないため、様々な可能性から将来性の見極めを行っている。当初予定していた三つのストーリーでは必ずしも活路が見い出せておらず、さらに別の着想の実現可能性などを並行して行っていることで、予想よりもやや時間がかかっている。しかしながら、本研究においては、失敗そのものが研究の前進と考えており、悲観的な状況にはないと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度(令和元年度)は、本研究の当初の三つの方法に加えて、平成30年度に試みたいくつかの方法を組み合わせて、高エネルギーX線用の高感度・高空間分解能構造化シンチレータの実現を目指す。特に、平成30年度に試みた超遠心充填法は非常に自由度が高く、かつ将来性の高いものであり、また、ペロブスカイト量子ドットシンチレータは、その発光効率の高さ、多色性、および狭いバンド幅から、現在、世界的に注目されつつあるが、当初の三つの方法とこれらを組み合わせることで、様々な発展可能性が期待できる。特に、ペロブスカイト量子ドットシンチレータについては、発光効率は高いものの、本研究で進めている高アスペクト比化の報告はなく、高感度の多色シンチレータの実現など、オリジナリティの高い展開が期待できる。GAGGの異方性ウェットエッチングについても、網羅的な研究が行えてるわけではなく、平成31年度も引き続き可能性について検討を続ける。 超遠心充填法については、鋳型の高アスペクト比化がキー課題となっており、上記の異方性ウェットエッチングだけでなく、Si、SiCなどのさらなる高アスペクト比化についても検討を続ける。 作製した構造化シンチレータは、SPring-8のベンディングマグネットビームラインからの白色放射光などを利用して、空間分解能および感度を評価する。さらに、実験室X線源では、大面積化も課題の一つとなっており、タイリング技術の実現可能性についても検討する。
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Causes of Carryover |
当初の研究計画に対してやや遅れており、実験データの解析を待って、次年度に執行した方が有効であると考えられたため。
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Research Products
(13 results)