2017 Fiscal Year Research-status Report
Laser Trapping - Spectroscopy of Single Earosol Oil Droplets: Chemistry of Supercooled Liquid
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17K19094
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
喜多村 昇 北海道大学, 理学研究院, 特任教授 (50134838)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | エアロゾル / レーザー捕捉 / 過冷却液体 / 顕微分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度の研究により、以下の成果を得た。 1)市販のプラスチック製ネブライザーに対して表面フッ素加工を施す事により耐有機溶媒性をネブライザーに付与することができた。これにより、ジメチルスルホキシド(DMSO)やtert-ブチルアルコール(t-BuOH)等を含めた種々の有機溶媒のエアロゾル化と、その単一エアロゾル油滴のレーザー捕捉に成功した。 2)室温~-40℃におけるDMSO(凝固温度(fp)=+18.5℃)およびt-BuOH(fp = +25.7℃)の単一エアロゾル油滴のレーザー捕捉に成功するとともに、それぞれ-40℃、-10℃まで凍結しないことを確認した。この事から、空気中に浮遊するエアロゾル液体は、水滴と同様に凍結温度以下においても過冷却液体として存在する事を明らかにした。また、DMSOー水混合溶媒はゲル状になることが知られているが、本研究のエアロゾルDMSO液滴の過冷却状態は水の混入によるものでは無いことを顕微ラマン測定から確認した。また、単一エアロゾルDMSO油滴のレーザー捕捉・ラマン分光測定を行い、過冷却状態の特徴を明らかにした。 3)単一エアロゾル水滴に関するレーザー捕捉・蛍光分光測定を行った。その結果、エアロゾル水滴の粘度は水滴サイズに依存して大きくなること、また、-10℃の過冷却エアロゾル水滴の粘度は室温に比べ100倍ほど高いことを確認し、過冷却水滴の物性の一部を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
使用しているエアロゾル発生用ネブライザーの耐有機溶媒性の付与に成功したことにより、種々の有機溶媒をエアロゾル化・レーザー捕捉する事が可能になった事は、本研究を推進する上で大きな進展となった。また、水のみならず、DMSOやt-BuOHのエアロゾル液滴についても過冷却状態が生成することを確認することができ、空中浮遊して何物にも接触していないエアロゾル液滴がfp以下においても凍結せず、過冷却状態となることが極めて一般的であることを予想させる結果を得た。更に、エアロゾル液滴の粘度は液滴サイズや温度に大きく依存する事も明らかにすることができた。特に、-10℃におけるエアロゾル水滴の年度は室温下に比べ100倍程高いことが明らかになった。これらの研究結果は、エアロゾル液滴の過冷却状態を反応場・環境とする新たな溶液化学への展開の可能性を示唆するものであり、本研究の狙いを裏付ける結果となった。以上の研究結果から、研究は当初研究計画以上に進展しているものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度の研究において、過冷却液体状態の粘度(流動性)や物性を明らかにする上で単一エアロゾル液滴のレーザー捕捉・顕微分光が極めて有用であることが明らかになっている。そこで、2018年度においては、エアロゾル液滴に溶解させた蛍光色素のピコ秒レベルの動的蛍光異方性測定を通して過冷却液体の粘度の絶対値測定を行う。また、過冷却エアロゾル液滴のwhispering-gallery-mode(WGB)共鳴スペクトル測定を通して、過冷却液滴の表面層の屈折率の見積もりも併せて行う。さらに、顕微ラマン測定により過冷却状態の構造(液体あるいはゲル状態)についても研究を進める。これらの研究については、水およびDMSOを対象として行う予定である。 本研究の最終目的は、過冷却状態のエアロゾル油滴を反応・環境場とする新たな溶液化学を展開することにある。そこで、t-BuOHのような水素結合性液体やパイーパイスタッキングを起こしやすい芳香族性液体を対象としたエアロゾル液滴のレーザー捕捉・顕微分光を推進し、その物性を明らかにするとともに化学反応計測へと展開する。 2017および2018年度の研究成果を総括することにより次の研究展開を図るとともに、得られた研究成果を学会・シンポジウムや学術論文誌へ発表し、研究成果を広く国内外に発信する。
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Causes of Carryover |
年度末に予定した出張計画が直前になり変更(短縮)となったため、相当する金額分が次年度使用となった。次年度使用分の予算については試薬等の購入にあて、無駄のないように予算執行する計画である。
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