2017 Fiscal Year Research-status Report
Creation of Main Group Compounds Behaving Like Transition-metal Compounds and Their Reactivity
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17K19113
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
斎藤 雅一 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (80291293)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | ゼロ価典型元素化学種 / ゼロ価遷移金属化学種 / ゼロ価スズ化学種 / N-ヘテロ環状カルベン |
Outline of Annual Research Achievements |
今日の触媒反応を担っている希少な遷移金属の代替として豊富に存在する典型元素を用いることは、持続可能な社会の構築に重要な課題である。一方、研究代表者が合成に成功したブタジエンのπ配位によって安定化されたゼロ価スズ化合物は、希少金属の代替品探索の重要な起点になると考えられる。そこで、今回、このゼロ価スズ試薬の反応性を検討した。 N-ヘテロ環状カルベンとの反応では、予想外の付加反応が進行し、スズ(II)化合物が生成した。これはゼロ価典型元素上での酸化的付加と捉えることができ、ゼロ価遷移金属化学種との対比において興味深い。このスズ(II)化合物は溶液中で予想外の分解をすることがわかった。この分解の過程で、化合物内に存在するシクロペンタジエニル配位子の炭素上のプロトンが引き抜かれるという、極めて特異な反応経路を見いだした。 硫黄との反応では、反応温度によって生成物が異なることがわかった。室温での反応ではゼロ価スズ化合物のスタンノール骨格が分解し、アセチレンが生成した。しかし、低温での反応では、異なる反応が進行していることがわかった。 一方、ゼロ価スズ化合物と遷移金属試薬との反応は進行せず、ゼロ価スズがもつ孤立電子対の配位能が低いことがわかった。これは用いているゼロ価スズ化合物のスズ周りの立体障害によるものと考え、よりかさの小さな置換基を有するゼロ価スズ化合物を新たに合成した。今後、この新しいゼロ価スズ化合物との反応を検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ゼロ価スズ化合物とN-ヘテロ環状カルベンの反応は当初の予想とは異なり、付加が一段階で止まったが、ゼロ価スズから二価スズが生成する酸化的付加と捉えられる興味深い反応である。また、得られたスズ(II)化合物の溶液中での分解挙動も予想外のもので、途中にシクロペンタジエニル配位子の炭素上のプロトンが引き抜かれるという、極めて特異な反応経路を見いだした。 硫黄との反応では、これも予想外に反応温度に応じて反応が変化することを見いだした。 一方、遷移金属試薬との反応は進行せず、スズ周りのかさが小さなゼロ価スズ化合物が必要になったが、既にその原料の合成に成功している。 以上のことを総合し、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
スズ周りのかさが小さなゼロ価スズ化合物とN-ヘテロ環状カルベンや遷移金属試薬との反応を検討する。 また、硫黄との反応については、低温での反応をNMRなどにより追跡し、反応の全貌を明らかにする。 加えて、さらに高周期の鉛のゼロ価化学種の研究にも挑む。
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