2017 Fiscal Year Research-status Report
動的イミン結合に基づく超分子ジャイアントリング:リングポリマーへの挑戦
Project/Area Number |
17K19118
|
Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
小林 健二 静岡大学, 理学部, 教授 (40225503)
|
Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
|
Keywords | 超分子化学 / 動的共有結合 / 熱力学平衡 / イミン結合 / 大環状化合物 / 環状高分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、「鎖状体と環状体両者の生成が可能な柔軟な長鎖スペーサーをもつDitopic系では、熱力学平衡に基づく強力なコネクターを用いれば、無理のない最小の数からなる超分子ジャイアントリングに収束する」というコンセプトを提案し、熱力学平衡に立脚する動的イミン結合を用いることによって、未だ達成されていない「超大環状化合物および環状高分子の高選択的かつ定量的合成法の開発」に挑戦することを目的とした。具体的には、長鎖かつ柔軟なスペーサーの両端にアルデヒド基またはアミノ基を有するダンベル型ベンズアルデヒドとダンベル型アニリンとの動的イミン結合反応を検討した。 初年度は、まず、[1]段階的に伸張した長鎖柔軟スペーサーの両端にアルデヒド基またはアミノ基を有するダンベル型ベンズアルデヒドとダンベル型アニリンを合成した。[2]続いて、動的イミン結合に基づく超大環状二量体(超分子ジャイアントリング)の合成条件の検討を行った。 酸触媒存在下、ベンズアルデヒドPh-CHOとアニリンPh-NH2は、熱力学平衡下でイミン結合体Ph-CH=N-Phを生成することが知られている。種々の反応条件検討の結果、脱水剤として過剰量のモレキュラーシーブスを用い、溶媒としてCHCl3を用い、ダンベル型ベンズアルデヒドとダンベル型アニリンの各基質濃度0.5 mM、触媒として4当量のCF3CO2Hを用いて室温下で48時間反応を行うことにより、動的イミン結合に基づく超大環状二量体(超分子ジャイアントリング)を良好~高選択的に生成することを見出した。形成率は、94員環で86%、140員環で86%、186員環で77%、232員環で71%、278員環で53%であった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
[1]当初計画通り、段階的に伸張した長鎖柔軟スペーサーの両端にアルデヒド基またはアミノ基を有するダンベル型ベンズアルデヒドとダンベル型アニリンを合成した。具体的には、片方の水酸基をMOM保護したビスフェノールA (MOM-O-Ph(CMe2)Ph-OH)と1,12-ジヨードドデカンを出発物質として求核置換反応と脱MOMを順次繰り返すことにより、両端にビスフェノールAをもち内部にドデシル基とビスフェノールAを繰り返し単位として有するHO-Ph(CMe2)Ph-[O-(CH2)12-O-Ph(CMe2)Ph]m-OHを合成した(m = 1-4)。そして、最後に、I-(CH2)12-O-Ph-CHOとの求核置換反応により、目的とするダンベル型ベンズアルデヒドCHO-Ph-O-(CH2)12-[O-Ph(CMe2)Ph-O-(CH2)12]n-O-Ph-CHOを系統的(n = 2-5)に合成した。n = 1は別法により合成した。同様にして、ダンベル型アニリンH2N-Ph-O-(CH2)12-[O-Ph(CMe2)Ph-O-(CH2)12]n-O-Ph-NH2も系統的(n = 1-5)に合成した。 [2]上記の最適反応条件下でダンベル型ベンズアルデヒドとダンベル型アニリン(各n = 1-5)を反応させることにより、動的イミン結合に基づく超大環状二量体(超分子ジャイアントリング)を良好~高選択的に生成することがわかった。n = 1では94員環が形成率86%、n = 2では140員環が86%、n = 3では186員環が77%、n = 4では232員環が71%、n = 5では278員環が53%で生成することがわかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
上記のとおり、長鎖かつ柔軟なスペーサーの両端にアルデヒド基またはアミノ基を有するダンベル型ベンズアルデヒドとダンベル型アニリンとの動的イミン結合反応を通して、「鎖状体と環状体両者の生成が可能な柔軟な長鎖スペーサーをもつDitopic系では、熱力学平衡に基づく強力なコネクターを用いれば、無理のない最小の数からなる超分子ジャイアントリングに収束する」というコンセプトを実証し、動的イミン結合に基づく高選択的な超大環状二量体(超分子ジャイアントリング)の合成に成功した。 次年度は、基質の濃度を少しずつ高めて、基質濃度とスペーサー長(n = 1~5)と超大環状二量体(超分子ジャイアントリング)の生成割合の相関性を明らかにする。 また、動的イミン結合以外の動的共有結合を用いた超大環状二量体(超分子ジャイアントリング)の選択的合成を検討する。 また、さらに長い高分子スペーサー(ポリエチレングリコールを想定)から成るダンベル型ベンズアルデヒドとダンベル型アニリンを合成し、動的イミン結合に基づく環状高分子二量体(超分子ジャイアントリング)の選択的合成を検討する。
|
Causes of Carryover |
[次年度使用額が生じた理由] 次年度への繰越額は¥1,564,980である。次年度(最終年度)の予算は¥200万円のため、次年度の消耗品費として、本年度敢えて¥1,564,980残した。 [使用計画] 繰越額は、次年度の消耗品費として使用する。
|