2017 Fiscal Year Research-status Report
不活性結合の二重切断を利用する触媒的カルベン発生法の開拓
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17K19122
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
浅子 壮美 岡山大学, 自然科学研究科, 助教 (80737289)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | モリブデン / タングステン / カルボニル化合物 / シクロプロパン / 脱酸素 / カルベン / 炭素-水素結合切断 |
Outline of Annual Research Achievements |
炭素を含む単結合の切断を起点とする物質変換反応は、クロスカップリング反応を筆頭に有機合成における基盤技術のひとつとなっている。なかでも、炭素-水素結合や炭素-炭素結合などの不活性結合の切断を利用するさまざまな物質変換反応が近年注目を集めている。これらの多くの反応において、不活性単結合は金属により一回切断され、炭素-金属単結合をもつ有機金属化合物が生成する。一方、同一炭素から伸びる結合を二回切断するとカルベンが生成するが、結合二重切断化学は、ジアゾ化合物やgem-ジハロ化合物のもつ結合エネルギーの小さい活性結合の切断に依然として依存しており、前者の結合一重切断化学に比べて大きく遅れをとっている。本研究では、不活性結合の二重切断による金属カルベン種の発生を鍵とする全く新しい物質変換反応開発を目指している。本年度は、ピリジル基、アミノ基、アリール基、アルキニル基といったさまざまな官能基を近傍に有するカルボニル化合物およびシクロプロパンを基質として用いて、モリブデン-キノン触媒を用いる分子内反応を検討した。その結果、カルボニル化合物の脱酸素やシクロプロパンの脱エチレンを経る分子内環化反応をいくつか見出した。カルボニル化合物の脱酸素とC(sp3)-H結合切断を伴う環化反応においては、重水素標識実験からカルボニル炭素の炭素-水素結合への挿入を確認した。実験研究と併行して行ったDFT計算により、本反応は当初の仮説通り、炭素-酸素二重結合切断による金属カルベン種の生成と、続く炭素-水素結合切断/炭素-炭素結合生成を経て進行していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
キノンライブラリー構築については、既知・未知化合物ともに着実に進展している。また、カルボニル脱酸素および逆シクロプロパン化を利用する分子内反応をいくつか見出すことができた。実験および理論研究により反応機構に関する重要な知見が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
キノンライブラリー構築へ向けた課題は、引き続き継続する。市販および合成キノンを用いた触媒系を最大限活用し、本年度に見出した分子内反応を磨き上げるとともに、次年度はより困難な分子間反応への展開を目指す。
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Causes of Carryover |
現時点で最適な組み合わせである安価な金属カルボニル錯体と市販のキノンを用いることが多かったため、また反応の触媒化に成功したため、試薬類の購入額が抑えられた。未使用額は、金属、有機薬品類、ガラス器具などの消耗品購入に充てる予定である。
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