2018 Fiscal Year Research-status Report
鋳型認識により自己複製を仲介するアロステリック触媒の開発
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17K19129
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
河合 英敏 東京理科大学, 理学部第一部化学科, 准教授 (50322798)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | アロステリック / 分子認識 / 自己複製 / キラル誘起 / 有機触媒 / 超分子ポリマー / 分子カプセル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、アロステリック会合を利用した自己複製触媒の開発を目的とし研究を行っている。2018年度には以下の3つの研究に取り組んできた。 1. 前年度に開発した軸不斉誘起型ウレアレセプターにおけるキラル誘起能を調査すべく、キラルなカルボン酸塩との会合を行い、円二色性スペクトルにおいて軸不斉が誘起されることを明らかにした。また、ウレアレセプターの部分構造を持つ比較化合物を用いた会合実験やHenry反応に対する触媒能を調査した。一方、目的とする自己複製の発現に期待される反応速度の加速は認められなかったことから、反応条件や適用する反応の検討、レセプターの構造改変が必要と考えている。 2. アロステリックレセプターを利用した自己複製伸長型超分子ポリマーの構築を目的とする研究を開始した。先に開発したヒドリンダセンジアミド型アロステリックレセプターにイミン形成能を組み込み、ゲストとなるアミノ基含有レゾルシノール誘導体との連結によって超分子ポリマー形成が可能なモノマー(鋳型分子)を自己増殖させるねらいである。この目的のもとCHO基含有レセプターを合成し、そのアロステリック会合能を確かめた。さらにゲスト会合実験に際しベンジルアミン類を添加したところ、ゲストが存在しない時と比べ、イミン形成反応が著しく活性化することを見出した。今後、アミノ基を有するレゾルシノール誘導体を合成し、超分子ポリマー化を検討する予定である。 3. 研究1に関連し、3枚のターフェニル部位を有するプロペラ型ウレアレセプターを構築したところ、レセプター自身がNMRタイムスケールより遅く自己会合することを見出した。この自己会合体はアキラルな構成要素からなるにもかかわらずキラルな会合体(溶液中ではラセミ体)であることをX線構造解析から明らかにした。さらにこの自己会合体がゲスト会合能を有するカプセル分子として機能することも見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
すでに複数種のアロステリックレセプターを構築しており、これをもとにした自己複製反応を調査中であることに加え、アロステリック会合を利用した新しいコンセプトとなる自己増殖システムとなる自己伸長型超分子ポリマーの開発を開始し、アロステリック会合に伴う反応活性化を達成することができていること、さらに予想を超えた発見として、アキラルなプロペラ型分子からキラル会合体形成が形成され、分子カプセルとしての機能をもつ分子系を見出すことができ、アロステリック会合能、反応活性化、キラル誘起といったキラル化合物の自己複製に必要な要素が順調に達成されていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度に向け、最終目標である鋳型分子の自己複製反応を達成する。具体的にはキラルな生成物の複製に向けた反応条件の検討、アロステリック触媒の構造改変を検討する。 自己複製伸長型超分子ポリマーに関しては、これまで合成例がほとんどないアミノ基含有レゾルシノールの合成を行い、超分子ポリマー形成能および自己複製能の調査を行う。 さらに新たに発見したキラル分子カプセルに関しては、未知な部分が多いことから、自己会合能に伴うキラル特性の発現に関しラセミ化能、ゲスト分子へのキラル誘起能、構造モチーフの一般性・拡張性の開拓などを行っていく。
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Causes of Carryover |
残額が少額であったことから無理に使うよりは次年度に繰り越すことで有効活用できると考えたため。
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Research Products
(5 results)