2018 Fiscal Year Annual Research Report
High-Resolution In-situ AFM Observation of Polymer Crystallization
Project/Area Number |
17K19147
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
熊木 治郎 山形大学, 大学院有機材料システム研究科, 教授 (00500290)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 高分子構造・物性 / 走査プローブ顕微鏡(AFM) / 高分子結晶 / 高分子超薄膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
高分子の結晶化過程については、現在でも不明な点が多い。我々は、従来不可能であった高分子鎖の結晶化挙動を原子間力顕微鏡(AFM)を用いて分子鎖レベルでその場観察することに初めて成功した。試料はイソタクチックポリメチルメタクリレート(it-PMMA)の非晶単分子膜をマイカ基板に移し取ったものであり、高湿度下で折りたたみ鎖結晶が形成する様子を分子鎖レベルで観察した。その結果、以下のような結晶化挙動を観察することができた。(1)異方的な核が生成し、それが分子鎖が4~20に折り畳まれた結晶に成長する様子が観察された。結晶過程の後半では、生成した折り畳み鎖結晶が形を変え、より完全な結晶に転移していく様子が観察された。(2)折りたたみ鎖が結晶面から成長する際に、一定の速度て成長するのではなく、分子鎖より小さなユニット単位でブロック的に成長することが観察された。これは従来の理論から一般に考えられてきた非晶鎖が結晶面に付着して折り畳まれていくという機構ではなく、非晶状態で分子鎖が一部折り畳み構造を形成し、それが付着して結晶化することを示唆して可能性がある。(3)また、折りたたみ結晶中で、高分子鎖が滑って結晶する様子も観察された。折り畳み鎖結晶中で高分子は数十回折り畳まれているため、このような運動は結晶内で分子鎖が共同的に滑ることによって始めて可能になる。(4)また、非晶領域で微小な結晶核が短時間で生成・消滅する様子も観察された。このことは、本結晶が均一核生成で成長していることを示唆している。以上のように、高分子鎖が結晶化していく様子を文字通り分子鎖レベルで観察することに成功した。これらの知見には、従来信じられてきた高分子の結晶化過程の根本的な見直しを迫る知見が含まれており、今後、さらに結晶化挙動を精密に観察することで、高分子の結晶化機構をさらに明確にできるものと期待される。
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