2017 Fiscal Year Research-status Report
鎖末端定序性官能基化ポリマーの精密合成とサブ10nm相分離構造形成
Project/Area Number |
17K19149
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
石曽根 隆 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (60212883)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | アニオン重合 / アニオン付加反応 / ビニル化合物 / 定序性高分子 / ポリマー鎖末端 / 求電子性 / 求核性 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、一連のビニル化合物の単独重合性の検証、鎖末端や鎖中に定序性ユニットを有する官能基化ポリマーの合成を検討した。具体的には、1)リビングポリスチレンやリビングポリイソプレンなどのポリマー鎖末端アニオンとビニル化合物(1,1-ビス(2-ピリジル)エチレン(Py2E)および1,1-ビス(4-(1-アダマンチルカルボニル)フェニル)エチレン(Ad2E))の付加反応を検討した。いずれの化合物も求核性の強いリビングポリマーを直接用いると、ピリジン環やカルボニル基に対して副反応が部分的に起こることが明らかとなった。一方、一度1,1-ジフェニルエチレン(DPE)によって1:1反応を行い、求核性を低下させたDPEアニオンに変化させた場合には、Py2EやAd2Eとの1:1付加反応が定量的に進行し、末端に1ユニットのみが導入できることを確認した。また、Py2Eの場合には、対カチオンを選択することで1,1-ビス(4-シアノフェニル)エチレン(CN2E)との連続的なアニオン付加反応が進行し、DPE-Py2E-CN2Eの3連続ユニットを有するポリスチレンが定量的に得られることを見出した。さらに、Py2Eは求核性の低いエノラートであるメタクリル酸tert-ブチルのリビングポリマーアニオンとも定量的に反応し、鎖末端に二つの2-ピリジル基を導入できることを明らかにした。二つの電子求引性の2-ピリジル基によってPy2Eの求電子性は向上し、逆に生成したPy2Eアニオンの求核性は低下していると考えられる。これほどの大きな反応性の変化は当初は予期しておらず、本挑戦的研究課題の初年度における大きな研究成果となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は概要に記載した通り、1,1-ビス(2-ピリジル)エチレン(Py2E)および1,1-ビス(4-(1-アダマンチルカルボニル)フェニル)エチレン(Ad2E)という新規ビニル化合物の反応性の検証を行い、適切な条件下で反応を行うことで鎖末端に1ユニットのみを定量的に導入できることを見出した。さらに他の非重合ビニル化合物との逐次的なリビングアニオン付加反応を行うことで、鎖末端に定序性ユニット(3連子)を有する官能基化ポリマーの合成にも成功した。もう一つの計画である定序性オリゴマーの合成については、他の1,1-ジフェニルエチレン誘導体のジアニオンを用いて、3種の官能基、フェノール性OH基、エチニル(アセチレン)基、シアノ基を順番に有する6量体オリゴマーを合成することを試み、現在構造の解析中である。このオリゴマーの合成研究と、引き続くカップリング反応による定序性高分子の合成については、原料の非重合性ビニル化合物の大量合成を行っている。合成した鎖末端定序性ポリマー溶液のキャストを行い、ミクロ相分離構造が形成されるか検証を開始している。以上の進捗状況から、平成29年度の研究はおおむね順調に進んだと判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、引き続き1,1-ジフェニルエチレン誘導体に加えて、α-アルキル置換スチレンやN,N-ジアルキルメタクリルアミド、N,N-ジアルキル-α -フェニルアクリルアミド、α-フェニルアクリル酸エステルなどの低重合性ビニル化合物の連続付加反応による鎖末端定序性ポリマーの合成を検討する。目標としては、4,5連子を制御することである。さらに、その結果を踏まえて、定序性ユニットのみから構成されるオリゴマーを合成する。その定序性オリゴマー同士のカップリング反応を利用して、シーケンスを制御した定序性高分子の合成を行う。最後に鎖末端(鎖中)定序性官能基化ポリマー(またはポリマーブレンド)をキャストすることにより、サブ10nmオーダーの高い規則性と配向度を持つミクロ相分離構造を、バルクおよびポリマー薄膜最表面において構築する。
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