2018 Fiscal Year Research-status Report
剛直ラセン構造をもつ脂肪族炭化水素高分子材料と機能
Project/Area Number |
17K19150
|
Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
竹内 大介 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (90311662)
|
Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
|
Keywords | ラセン高分子 / ポリオレフィン / ブロック共重合 / パラジウム触媒 / ランダム共重合 / 高分子反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、かさ高い置換基をもつオレフィンの重合を行うことで、剛直なラセン構造を有する脂肪族炭化水素高分子の合成を行い、さらに結晶性の剛直ラセンブロックと非晶性の多分岐ポリオレフィンブロックを含むマルチブロック共重合体を合成し、その諸性質を、共重合体組成を変えることで調整できる新しい高分子材料を創製することである。昨年度までに、パラジウム触媒によるtert-ブチルエチレンの重合が進行し、立体規則性がイソタクチックに制御された、らせん構造を有するポリマーが得られることや、シクロアルカン構造および4級炭素を含むモノマーの重合も同様に進行することを見出している。今年度は、tert-ブチルエチレンとオレフィンをパラジウム触媒により順次反応させることで、両者のジブロック共重合体およびトリブロック共重合体を合成することに成功した。得られたブロック共重合体のDSC測定の結果、ポリオレフィンブロックに由来するブロードな融点が観測された。今年度はさらに、パラジウム触媒による環状アセタール構造やオルトエステル構造を有する嵩高いオレフィンの重合やオレフィンとの共重合について検討を行なった。これらのモノマーの単独重合は進行しなかったが、オレフィンとの共重合は進行し、かさ高い極性モノマーユニットがポリマー主鎖に導入されたポリマーが得られた。生成ポリマーの加水分解により、ポリマー中の環状アセタール基やオルトエステル基を、それぞれアセチル基、カルボキシ基に変換することに成功した。パラジウム触媒によるオレフィンと極性ビニルモノマーとの共重合では、通常極性基が分岐末端に導入されたポリマーが得られることから、かさ高い極性モノマーはポリマー主鎖に極性基を導入するための有用な手法であると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画どおり、tert-ブチルエチレンとオレフィンとのブロック共重合について検討を行い、ジブロック共重合体、トリブトック共重合体の合成に成功した。ポリtert-ブチルエチレンブロックはラセン構造をとっている一方、ポリオレフィンブロックは結晶性が低く、ハード・ソフト型の脂肪族炭化水素ブロック共重合体である。極性基を含むかさ高いモノマーについては単独重合を達成することはできていないが、オレフィンとのランダム共重合および生成ポリマーの加水分解に成功した。これは、当初の目的とは異なるが、かさ高い極性モノマーが、極性モノマーユニットが主鎖に導入されたポリオレフィンを合成する有用な方法となることを見出した点で意義は大きい。以上のことから、おおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
かさ高いオレフィン類のブロック共重合体合成についての検討結果をもとに、パラジウム触媒によるブロック共重合体において、α-オレフィンとかさ高いオレフィンの等量比を様々に変えることで、剛直なラセンブロックおよび非晶性ブロックの長さの異なる様々なブロック共重合体を合成する。これらのDSC測定を行い、ミクロ相分離について評価する。最近、パラジウム触媒によるオレフィンのリビング重合において、リビングポリマーに対して様々な極性ポリマーを導入する新たな手法を見出しており、これをかさ高いオレフィンの重合に応用することで、剛直ラセンブロックと極性ブロックを有するブロック共重合体の合成についても検討を行う予定である。
|
Causes of Carryover |
研究代表者が今年度に東京工業大学から弘前大学に異動し、研究室立ち上げのためにある程度研究費を使用した。10月に学生が配属され、それから本格的に弘前大学での研究活動を開始したため、試薬等の物品費はそれまで多くならなかった。研究室の基本的な設備が整ったことや、学生が配属されたことから、次年度は当該研究をさらに活発化させる計画であり、そのために本年度の使用額の一部を次年度に使用することにした。次年度使用額分については、試薬等の物品費や、研究成果を学会で発表するための旅費に使用する予定である。
|
Research Products
(17 results)