2017 Fiscal Year Research-status Report
Challenge to Asymmetric Multicomponent Reactions Utilizing Chiral Amplification Phenomena in Helical Structures with a Minute Chiral Source
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17K19154
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
前田 勝浩 金沢大学, ナノ生命科学研究所, 教授 (90303669)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
覚知 亮平 群馬大学, 大学院理工学府, 助教 (00743816)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 多成分連結反応 / 不斉増幅 / らせん / ポリアセチレン / 不斉反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、コンビナトリアル化学の成熟に伴い、三成分以上の基質が単一の生成物へと収束する反応(多成分反応)の重要性が認識されている。医薬品や機能性材料の創成において不斉合成反応が求められており、多成分連結反応においても同様に有効な不斉合成手段の構築が求められている。一方で、反応に関与する基質の多さから、多成分連結反応の反応機構は不明瞭であることが多い。この問題を解決するため、本研究ではらせん高分子が特異的に示す不斉増幅現象に着目した。らせん高分子は強力な不斉場を形成し、かつ高分子効果によりその不斉特性を増幅可能であり、不斉らせん高分子上で多成分連結反応を行うことで、少ない不斉源からの効率的な多成分連結反応が可能であると仮定した。 上記の研究計画を遂行するため、本年度は反応性基を有するらせんポリマーの設計・合成を行った。達成すべき不斉多成分連結反応としてPasserini反応をモデル反応として選択した。これは、Passerini反応が高分子合成に有用であることが既に知られており、さらに必要な反応基質としてらせん高分子に導入が容易なカルボン酸を用いるためである。以上を考慮し、カルボン酸を側鎖に有するらせんポリマーの合成を行った。具体的には、側鎖にカルボン酸を有するポリ(フェニルアセチレン)およびポリ(ジフェニルアセチレン)誘導体を合成した。その結果、反応性基を有する一方向巻きのらせん高分子の合成に成功し、らせん高分子上での不斉多成分連結反応を検証可能な状況となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はらせんポリマー上での多成分連結反応を可能にする、らせん高分子の設計および合成に注力した。はじめに、多成分連結反応の足がかりとなる反応性基の選定を行った。当初の計画通り、らせん高分子に芳香族アミノ基の導入を目指したが、アミノ基含有モノマーの重合が進行しなかった。このため、Passerini三成分連結反応の足がかりとなり得るカルボン酸に着目した。さらに、不斉多成分連結反応への応用展開を考慮し、らせん構造の性質が異なる二種類のらせん高分子に着目した。つまり、溶液中で動的ならせん構造を取り得るポリ(フェニルアセチレン)誘導体および溶液中で動的かつ静的ならせん構造を取り得るポリ(ジフェニルアセチレン)誘導体の二種類のポリマーを基本骨格とした。ポリ(フェニルアセチレン)誘導体の場合には、らせん構造の動的な性質から、少量のキラルコモノマーとの共重合を行った。具体的には、4-エチニル安息香酸とL-アラニン含有モノマーとの共重合により、カルボン酸を有する一方向巻きらせんポリマーを合成することができた。一方、ポリ(ジフェニルアセチレン)誘導体の場合には、らせん誘起と記憶の手法により光学活性アミンとの相互作用を利用してカルボン酸を有する一方向巻きのらせんポリマーを合成した。以上を総括し、本年度は本研究目的の達成に必要な側鎖にカルボン酸を有する一方向巻きらせん構造のポリ(フェニルアセチレン)およびポリ(ジフェニルアセチレン)誘導体の合成に成功し、不斉多成分連結反応への応用を指向した上で最も重要な基盤を構築出来たと判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は本年度の成果を活用し、らせん高分子に対する多成分連結反応に軸足を移す。多成分連結反応として、カルボン酸を反応基質とするPasserini三成分連結反応およびUgi四成分連結反応の活用を想定している。らせん高分子に対する多成分連結反応の反応効率をNMRやIRなどの各種測定によって詳細に調べ、反応条件と反応効率との相関を明らかにする。次に、多成分連結反応により化学修飾されたらせん高分子の分解反応を行い、側鎖構造から対応する目的化合物を単離する。そのエナンチオマー過剰率をキラルHPLCにより調べ、ポリマー主鎖のらせんキラリティーが効率的に不斉多成分連結反応へと転写されているのかを評価する。反応条件とエナンチオマー過剰率との相関を明らかにし、その結果を反応条件にフィードバックすることで、より高効率な不斉多成分連結反応の実現を目指す。また、多成分連結反応を利用した新しいらせん高分子の機能性材料としての応用を目指し、得られたらせんポリマーをHPLC用のキラル固定相として応用し、そのキラル識別能を調べる。さらに、得られる新規らせんポリマー誘導体の熱特性などの諸物性を、示差走査熱量測定や熱重量測定などにより詳細に調べ、新しい高分子材料としての評価を行う。上記を総括し、来年度以降はキラルらせん高分子を反応場とした高効率な不斉多成分連結反応の達成および、それに基づく新しいらせん高分子材料の創成を目指す。
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Causes of Carryover |
(理由)経費は当初計画に沿って使用されたが、使用品目の組み合わせ上、残額が0円とはならなかった。 (使用計画)執行見込額と実支出額に僅かな差異が生じたが、研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、予定通り計画を進める。少額であるため、その他の費目として使用する。
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Research Products
(2 results)