2018 Fiscal Year Research-status Report
Chemical Reaction Capacitor "Establishment of a Concept"
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17K19173
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
由井 樹人 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (50362281)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 層状半導体 / 化学反応コンデンサ / レニウム錯体 / ビオロゲン / 化学反応制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
電気回路にはコンデンサと呼ばれる回路が組み込まれており、電圧の安定化・ノイズ除去・電気信号の取り出しといった電気回路において重要な役割を担っている。コンデンサの役割を化学反応で再現できれば、化学反応においても収率向上・生成物選択性向上などの精密制御が可能性となる。しかし、このようなコンセプトで化学反応を能動的に制御する試みはない。研究代表者らは、層状酸化物半導体(LMOSs)の積層体中においてラジカルなどの従来不安定な化学種が、溶液と比べ著しく安定に存在することを見出している。また、安定化された化学種に対して気体状の反応試薬を導入すると、ラジカルの消失が確認された。このようなラジカル種の安定化挙動は、電気回路におけるコンデンサの蓄電・放電挙動に類似していると考えられ、コンデンサの役割を化学反応に適応・再現する「化学反応コンデンサ」という着想に至った。本研究では、レニウムジイミン錯体(Re錯体)による二酸化炭素の光還元を中心とする様々な反応系を用いて、LMOSs層間での光ラジカル生成およびLMOSs層間での安定化挙動などを仔細に調査する。さらにLMOSs層間で安定化したラジカルとガス状分子との反応を行うことで、ラジカルの蓄積と放出が可能な化学反応コンデンサの概念確立およびプロトタイプ作成を目指す。このような研究目的のもと、LMOSsと複合化可能なカチオン性Re錯体や光機能性分子の合成・Re錯体と層状化合物(clay)との複合化と光化学挙動・透明膜状のLMOSsの合成と光機能性カチオン性分子との複合化を行い、それぞれ特徴的な成果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度までの研究成果として、1) カチオン性Re錯体の新規合成:LMOSs表面は負電荷を帯びているため、カチオン性の分子を層間導入可能である。しかし、明確な点電荷を有するカチオン性レニウム錯体はほぼ存在しない。Re錯体配位子を有機合成的に修飾することで、新規カチオン性Re錯体の合成に成功した。2) カチオン性Re錯体とclayとの複合化と光化学挙動:LMOSs層間は、比較的強い相互作用で結びついているため、金属錯体類を挿入することは通常困難である。LMOSsに代わり、多様な錯体との複合化が報告されている層状粘土鉱物(clay)を用いて、層状化合物/Re錯体複合体の合成とその光化学挙動について観測を行なった。層状化合物表面で、Re錯体の励起寿命が著しく長寿命化すること、光に対してRe錯体が安定化しclay上でCO2還元が進行することが示唆された。3) 透明膜状のLMOSsの合成:本研究目的では、光学的に透明なLMOSsの膜が必要である。LMOSsを適切な化学処理で単層剥離したのち、低温焼成を行うことで透明なLMOSs膜を得ることに成功した。5) 前述の低温焼成膜ではRe錯体の複合化が困難であることが明らかになった。別の複合化手法として、Layer-by-Layer (LbL)法によるカチオン性分子/LMOS複合膜の作成を行なった。LbL法は、高分子を積層する手法であり、低分子量の分子積層実績はなかったが、独自の手法開発により低分子化合物でも良好な透明膜を得ることに成功した。このように複合化手法を根本的に見直す必要に迫られたため、進捗が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までの研究実績からLMOSsなどの層状化合物とRe錯体との複合化に成功し、本複合体が非常に特異的な光化学挙動を示すこと、CO2還元においても高いポテンシャルを有する可能性を見出した。しかし、通常のイオン交換反応では、LMOSs薄膜とRe錯体の複合化が十分に進行しないことが明らかとなった。この点を改善するため、H30年度は別の手法でLMOSとの積層複合化の探索を行なった。種々の検討の結果、Layer-by-Layer (LbL)法とカチオン性ビピリジニウム(BP)により、低分子系の化合物であっても積層化と透明薄膜化が可能であることを見出した。BP類は、光によりラジカル種を生成するとともに酸素ガスによりラジカル種を消失させる機能があり、Re錯体に加えて本研究のコンセプトを満たす分子である。 これらの検討を受けて、1) Re錯体に先行してBP/LMOSsのLbL膜を用いて、光ラジカル生成と消滅を観測し、本研究の基本コンセプトを確認する。2) LbL法によるRe錯体との複合化を行い、目的とする膜を得る。3) 1)手法を参考に、2)で得られたRe錯体/LMOSs複合膜に対して、還元剤存在下でLMOSsが光吸収する波長の光を照射することで、Re錯体のラジカル種の観測を行う。特に、雰囲気制御した条件でラジカル種を観測しラジカル種の寿命などを分光学手法にて決定する。これらの分光分析には、我々が独自開発した薄膜専用マルチ瞬間分光分析装置を用いる。
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Causes of Carryover |
本年度は、LMOSs/Re錯体との複合化に注力したが、複合化手法に手間取り分光分析・解析への展開が遅れてしまったため、次年度使用額が発生してしまった。本年度は、本格的な分光分析を行うため、分光分析機の補助装置などを導入し、円滑な予算執行を計画している。
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Research Products
(12 results)