2019 Fiscal Year Research-status Report
結晶性ホストへの戦略的機能統合による革新的触媒システムの構築
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17K19185
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
近藤 美欧 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (20619168)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2021-03-31
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Keywords | 錯体化学 / 小分子変換 / フレームワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
金属有機構造体や多孔性配位高分子などの多孔性材料は、細孔での小分子の選択的な捕捉が可能であり、不均一系触媒としての応用が注目されている。しかし、配位結合を駆動力として構成されるこれらの多孔性化合物に対して、触媒活性部位をフレームワーク内部に自在に導入することは未だ難しい。我々はこれまでに、触媒部位とコネクター部位を併せ持つ分子性モジュールの自己集積によって構築される超分子フレームワークの開発を行った。本研究では、分子性モジュールの自己集積化による超分子フレームワーク構築の適応範囲を拡張するため、触媒部位に水の酸化錯体触媒であるCo(III)キュバン型錯体Co4O4(OAc)4(py)4を、コネクター部位にHppeb配位子を採用した新しい超分子フレームワークの開発を目的とした。 Co(III)キュバン型錯体Co4O4(OAc)4(py)4の配位子置換反応により、ppeb配位子が4ケ所に導入された錯体(L4)の合成に成功した。更に、ppeb配位子が2か所に導入された錯体(L2)の合成にも成功した。L4ではppeb配位子同士がAr-ArF相互作用を発現し、上下に重なりあうことで自己集積し、超分子フレームワークFL4を構築していることが明らかとなった。また、L2においても結晶状態においてAr-ArF相互作用により自己集積し、超分子フレームワークFL2を構築することが明らかとなった。L4とL2ではモジュールの構造が異なるため、それぞれが形成するフレームワークFL4、FL2においても空孔の形、大きさ、空隙率、相互作用の様式などが大きく異なっていた。このように分子性モジュールに導入するppeb配位子の数を変化させることで2種類の超分子フレームワークを得ることに成功した。また、FL4が電気化学的条件下で水の酸化反応を触媒することも明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、相補的相互作用サイトを有する金属錯体分子を用いた結晶性ホストの創出ならびに結晶性ホストの疎水的空間を利用した物質変換反応系の構築を目標としている。本年度の研究では、コバルトキュバン錯体に対し相補的相互作用サイトを有する配位子Hbppを導入することで、フレームワーク構造が構築可能であること、ならびにフレームワーク構造を利用した酸素発生触媒の開発に成功した。したがって研究はおおむね順調に進展したと判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究においては、還元能を有するフレームワークと酸化能を有するフレームワークの2種類のフレームワーク材料の構築に成功した。今後は、得られたフレームワークについて反応場の構造・物性・触媒能を詳細に調査し、反応場が触媒能に与える影響について系統的な評価を行いたい。加えて、還元性フレームワークに対し酸化触媒を導入、或いは酸化性フレームワークに対し還元性触媒を導入し、酸化・還元反応をいずれも駆動可能な機能統合型触媒材料の開発へと繋げたいと考えている。
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Causes of Carryover |
2019年度の研究においては、大阪大学への異動に伴い、研究協力者として参画する予定で会った学生2名の研究参画が難しくなったため、当該学生の研究活動に必要となる消耗品費ならびに旅費が不要になった。以上の理由から次年度使用額が生じている。これらの予算については、次年度以降に試薬等の消耗品費の購入ならびに研究代表者・研究力力者の旅費・論文投稿費用等に充てる予定である。
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Research Products
(8 results)