2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K19189
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鳥谷部 祥一 東北大学, 工学研究科, 准教授 (40453675)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 分子ロボティクス / ナノテクノロジー / ナノバイオ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では,ペンで描くようにナノ構造を自在に造形できる「ナノ3Dペン」を開発することを目指している.従来のリソグラフィ技術では困難な 動的で柔らかく機能的な構造を簡単・高速・安価に造形できると期待できる.化学的性質,硬さ,磁性などを局所的に変えることが可能であり,生体分子や細胞をナノ構造により制御する新しい工学分野を切り拓く.本課題では,「高分子溶液中での局所加熱による粒子凝集技術」と「DNAヘアピンを用いた粒子接着技術」を組み合わせてナノ3Dペンを開発し,動的で多様な機能を持つナノ分子ロボットや,生体分子や細胞を任意のパターンで空間配置するプラットフォームを実現することを目指している. 平成29年度は,まず,高分子(ポリエチレングリコール)溶液中で,直径500nmの微小粒子を長波長(1440nm)の赤外レーザーで集めて加熱して粒子が凝集することを確認した.その後,ヘアピンDNAで修飾した直径500nmの微小粒子を凝集させることで,赤外レーザーを照射した箇所でのみ粒子の塊が形成させることに成功した.レーザー位置を手動で動かすことで,ガラスキャピラリー上に構造を造ることができた.さらに,ガルバノミラーを導入し,赤外線レーザーをPC制御で走査できる実験系を組んだ.これを利用し,ガラスキャピラリ上で構造を造形することに成功した.特に,単に一方向に走査するのではなく,折り返しを行いながら走査することで,構造を確実に造形できることを発見した.しかし,現状では構造形成に時間がかかり効率が悪い.より最適な溶液条件およびガラス表面の化学修飾法を模索する必要がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度は,①DNAの設計およびナノ粒子の凝集実験,および,②PC制御による造形の自動化,さらに,③複数種類の粒子を用いた複雑な構造の造形を目指した.このうち,①および②は終了したが,③には手がつけれらていない.ひとつの問題は,高分子濃度を濃くすれば凝集力が強まるが,一方で,溶液の粘弾性が強くなり構造体形成に支障が出ることである.これを解決するため,溶液条件(高分子の種類および濃度等)のチューニングに時間がかかり,まだ十分に最適化できていない. 今後,DNA配列から見直し,凝集のしやすさと粒子同士の特異的な結合の両方を満たす最適な条件を探していく.また,ガラス表面への粒子の特異的結合を実現するため,ガラス表面の化学修飾に取り組んでいる.文献を調査して様々な方法を試した結果,ある程度の特異性は得ることができた.しかし,まだ非特異的なガラス表面への粒子接着が見られる.引き続き最適な方法を探していく.
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度前期では,(1) 粒子に修飾するヘアピンDNAの配列を設計しなおして,温度の上げ下げ時の接着のヒステリシスをできる限り大きくすることで,粒子同士の接着の特異性を高める.また,ガラス表面の化学修飾法を改良して,粒子とガラスの間の接着の特異性を高める.まだ試していないポリアクリルアミドブラシによる非特異的吸着の抑制が効果的だと考えている.(2) その後,溶液条件(高分子の種類,長さ,濃度等)を網羅的にスクリーニングして粘弾性を定量的に評価し,粒子の凝集と構造体形成に最適な条件を探す.本年度後期には,(3) ガラス表面での自動走査による構造体形成を目指す.さらに,複数種類の粒子の接着を行い,抗体付き粒子を用い,GFP分子のパターニングを目指す.
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