2017 Fiscal Year Research-status Report
光反応による構造多様性ビオチン化人工天然物エキスの創製
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17K19191
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
荒井 緑 千葉大学, 大学院薬学研究院, 准教授 (40373261)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 光環化付加 / 植物エキス / 多様性 / ライブラリー |
Outline of Annual Research Achievements |
植物,放線菌などの天然資源から得られる抽出エキスは,人知の及ばない骨格から成り立つ多様な化合物の混合物である.この多様性と希少性に着目し,近年では有機合成反応をエキスにほどこし,さらに多様性を増大させた人工天然化合物の混合物を作製しようという試みが行われている.しかしながら,その報告例はまだ少なく,人工天然物エキスの創成研究は始まったばかりである.本研究ではこれまで天然物エキスへの応用例のない光化学反応を用い,構造多様性を増大させながら,さらにビオチン化を一挙に行う「構造多様性ビオチン化人工天然物エキス」の創出と「新規生物活性分子の創成」を目的とする. 本年度は,[3+2]光環化付加反応に着目した.植物エキスの中に豊富に含まれるフラボノイド類に着目し,ケイ皮酸メチルを加え,UV照射することにより,光環化付加反応を起こさせることを計画した.まず,フラボノイドが豊富な植物として,市販の生薬,アマチャ,センナなど,9種を選定した.それぞれ30 gをメタノールにて24 h抽出し,エキスを得た.それぞれのエキス50 mgをメタノールに溶解し,ケイ皮酸メチルを加え,UV照射を行った.得られた混合物からシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて過剰のケイ皮酸メチルを取り除き,得られた混合物をLC-MSにて解析を行った.植物のみのエキスと比べて,新規のピーク(化合物)が得られたものをヒットとした. チョウジ,リョウキョウにおいて,光反応後に新規の化合物が得られることを確認した.そのうちチョウジにおいて,シリカゲルカラムクロマトグラフィー,ODS HPLCにて分離を行った.量が少なく解析が困難であったため,生薬エキスの量を5 gとスケールを大きくして光反応を行い,標的のピークの分離を行った.化合物はMeO基を3つ有する芳香族化合物であることが判明した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
植物エキスを用いたケイ皮酸メチルとの光反応の試みは初であり,それぞれの試薬や溶媒の量,反応時間,温度等,検討事項が多くあったが,それを順調に検討し,一定の反応条件を見いだしている.また,反応後のケイ皮酸メチルの除去の方法,LC-MSでの反応の解析方法など,確立できた. フラボノイドが豊富な市販の生薬エキスを選定し,それぞれのMeOH抽出エキスを作成できた.また,ケイ皮酸メチル存在下での光反応を実際に検討し,それぞれの結果をLC-MSにて検討を行った.現在,新規化合物が創出されたと考えられるエキスを2種得ており,1種については,スケールを大きくして,反応を行い,各種カラムクロマトグラフィーにて分画を行った.新規に得られた化合物を精製することに成功し,現在,構造解析を行っている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,チョウジから得られた新規化合物について構造決定を完了するとともに,さらにリョウキョウにおいて得られた化合物の分画と構造決定を行う.さらに,他の植物を再検討し,フラボノイドが豊富を考えられる植物の入手を検討する.それらのMeOHエキスを作成後,ケイ皮酸メチルや,他にも光反応可能な芳香族二重結合含有の化合物とともに光反応を検討する.光反応の溶媒や時間,反応温度など,必要があれば順次検討を行っていく. さらに,得られた化合物がアグライン骨格を有するものであった場合は,更なる合成化学的変換を経て,ロカグラミド誘導体の合成も検討していく.また,現在,高圧水銀ランプを光反応に使用しているが,大変高温になり危険であるため,LEDランプ等の使用も検討していく. また,得られた新規化合物群については,幹細胞において重要なシグナル伝達で,異常亢進するとがんにもつながるノッチ(Notch),ウィント(Wnt),ヘッジホッグ(Hedgehog)シグナルの阻害活性を有するか検討を行う.さらに活性が認められた化合物については,がん細胞や神経幹細胞への影響を検討する.標的タンパク質の発現を阻害するかどうか,ウェスタンブロットやリアルタイムPCRを用いて検討する.
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Causes of Carryover |
当初計画していた生薬からの抽出,光反応の検討等が予定よりスムーズに進行し,当初予定していたろ紙,バイアルなどの消耗品等へ支出する予算が節約できた.そのため,51,375円を次年度に使用することとした. 使用計画としては,実験に用いるバイアル等の消耗品の購入に充てることを計画している.
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